耕して天に至る、まるで空へ続くピラミッド! 愛媛宇和島・遊子水荷浦の段畑の歴史と景観を次世代へ | おうちごはんラボ

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耕して天に至る、まるで空へ続くピラミッド!
愛媛宇和島・遊子水荷浦の段畑の歴史と景観を次世代へ

オフィシャルメンバー 旅人料理編集部

四国の西南、愛媛・三浦半島にある国の重要文化的景観「遊子水荷浦の段畑(ゆすみずがうらのだんばた)」。青い海を前に、急斜面の段々畑がピラミッドのように空へと続く景色がフォトジェニックな観光客に人気の場所です。

ここで、おいしいと評判のジャガイモをつくる鳥井康幸さんは、NPO法人「段畑を守ろう会」の副会長。会では、江戸時代から続く歴史ある段畑を次世代に残していくためさまざまな取り組みをしています

美しい遊子の景観を守ろうと、特産品のジャガイモ「早掘りバレイショ」の収穫に励む鳥井さんをシーズン終わりの段畑に訪ねました。

 

 

国の重要文化的景観「遊子水荷浦の段畑」

愛媛南予の宇和島市中心部より西に向かって車で約20分。宇和海に突きだした細長い鉤状の三浦半島の真ん中あたりに位置する遊子水荷浦。水が乏しかった地域であり、水を荷物のように担いで運んでいたことから「水荷浦」と名付けられたのだそう。

海の中に山が突き出ているような、ごくわずかな平地しかないため、江戸時代から山を切り拓いて段々畑がつくられてきました。最盛期の昭和30年代にはこの山一面が30ヘクタールを超える8,900枚の畑だったそうですが、養殖産業の発展とともに山の畑は衰退し、昭和の終わりには2ヘクタールにまで減少。

 

どんどん山野に還っていく段畑に危機感を持った人々が集まり、「段畑を守ろう会」を平成12年に結成。石垣の修繕などを行い、5ヘクタールほどに段畑を復活させました。

そのかいあって徐々に景観がよみがえり、平成19年には風景部門の国宝ランクともいわれる「国の重要文化的景観」に3例目として選出されました。

 

 

耕して天に至る、まるでピラミッドのような景観

現在800枚ほどに復活した段畑ではジャガイモが栽培され、地域の特産品となっています。「段畑を守ろう会」では、ジャガイモのオーナー制度を設けており、取材日は松山市在住のオーナーさんたちが、収穫体験をしているとのことでその様子をみせていだくことになりました。

段畑の最上段に小さく見える人々が分かりますか? 今からあそこまで登っていきます!

 

「早掘りバレイショ」と呼ばれる遊子のジャガイモの収穫は4月中旬から始まり、5月上旬には終わります。取材日の5月上旬にはあらかたの畑が収穫を終えており、きれいに整地された畑がまるで大きなパイかミルフィーユのように山頂へと続いていました。

 

近づいてみればわかりますが、勾配はかなりきつく、各段への上り下りのためのハシゴがかけられています。ばらつきはありますが、各畑はだいたい幅1m、高さ1.5mだとのこと。

 

「耕して天に至る」と称される遊子の段畑。まるで天に続くピラミッドのように、整然と手入れされた石段が空に向かって伸びています。

 

約80mの山頂からは、宇和海を一望するすばらしい景色が。そして山頂に来てやっと、収穫が終わっていないシートに包まれたジャガイモ畑を目にすることができました。

青い宇和海と緑の島々、そして奥に鬼ヶ城連峰を望む絶景の中で今季最終のジャガイモの収穫を行う鳥井さんとオーナーさんたち。まるで絵ハガキのような光景です。

 

 

鳥井さんとNPO法人「段畑を守ろう会」が作るおいしいジャガイモ

現在遊子では、鳥井さんを含む20軒ほどの農家が、段畑でジャガイモ栽培を営んでいます。ですが、今見てきたように傾斜のキツイ畑を行き来しての作業はかなりの重労働。

畑作業ができなくなる農家も多く、そういった使用できていない畑を所有者に代わって、鳥井さんたち「段畑を守ろう会」のメンバーがケアしています。そして、作付け面積を減らさないように毎年夏に次年度のジャガイモのオーナーを募集し、美しい段畑の景観を守っています。

 

会では他にも、収穫祭や夕涼み会などのイベントや芋焼酎の開発、特産品直売所の運営など、段畑だけでなく遊子地域の活性化を目指してさまざまな活動を行っているそうです。

 

今年は豊作だそうで、こんなにツヤツヤで大きなジャガイモがたっくさん採れました! 大きなおイモが土の中から次々と現れ、あちこちから聞こえるオーナーさんたちの歓声。芋掘り体験って楽しいですね~。

宇和島周辺ではそのおいしさからブランド芋になっている、遊子のジャガイモ「早掘りバレイショ」。そのおいしさのヒミツを聞いてみると、

 

まず、遊子の土は乾燥気味でサラサラとしており、水はけがよいことがジャガイモづくりにはピッタリなのだそう。

「日当たりがよい斜面にあって、昼間にあたためられた石垣が土の温度を下がるのを防いでくれていること。それに海からの潮風芋の甘みをましてくれること、加えて機械が入らないから昔ながらの手作業で育てていることじゃないかな」と、鳥井さん。

 

 

「早掘りバレイショ」ができるまで

早掘りバレイショは、11月頃になると種イモを適当な大きさに切って、植え付けます。

 

植え付けたら、雑草を防ぎ土をあたたかく保つためにシートをかけていきます。これはシートをかけ終わった12月下旬頃の畑の様子ですが、何か巨大なパイプオルガンみたいですよね。

 

芽がでてきたら、シートを破いて葉を茂らせます。2~3月頃にかけてはこのように、一面緑の葉っぱで段畑は覆われます。

水やりは降雨のみ。人の手を使っての水まきは一切しない、というかできないのだそう。でも、毎年立派なジャガイモができるということなので、ジャガイモってかなり乾燥好きな植物なんですね。

 

そして葉が枯れ始めた4月頃から収穫作業に入ります。

 

シートの下からすぐおイモが顔をのぞかせています。根っこを引き抜けば大きなおイモがゴロゴロ。

 

「夕飯に早速いただくわ~」とオーナーさんたちも大喜びの収穫体験。

皮が薄くてみずみずしい、掘ったばかりの新じゃがのおいしさを皮ごと満喫できる、鳥井さんおすすめの簡単メニュー「新じゃがのジャーマンポテト」のレシピはこちら

 

 

遊子の歴史と段畑を残していきたい

今回収穫したのは、海80mにある60段目あたりの最上段で採れたジャガイモ。最大傾斜度が45度もある段畑の急勾配を、以前は人力で担いで降ろしていたとのことです。

が、10年ほど前にモノレールと軽トラックが入れる道ができ、以来作業はだいぶ楽になったのだそう。収穫したジャガイモはモノレールに載せられて難なく下まで運ばれます。

 

とはいえ、かなりの急勾配の斜面をバックのまま下っていく鳥井さんのモノレール。やはり素人には真似できない職人ワザです。

 

「地域活性化活動とかよく言われるけど、そんなたいそうなことではなく自分が生まれ育ったこの遊子の景色を残していきたいだけなんだよね。遊子のジャガイモ農家の高齢化は深刻だし、僕たちもだんだん動けなくなってくる。その時に誰がここを、僕たちの活動を引き継いでくれるのか」

と、課題は山積みなのだそう。ですが、今年は豊作。できのいいジャガイモがたくさん採れて嬉しいと笑う鳥井さんの笑顔と、宇和海の青さが心に残る5月の爽やかな午後のひとときでした。

 

☆NPO法人段畑を守ろう会 ばれいしょオーナー制度

https://www.pref.ehime.jp/h35100/chokomaru/search/danbata.html

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