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柑橘の大トロ!?この道50年の柑橘名人が手がける「せとか」がおいしい理由

オフィシャルメンバー 旅人料理編集部

一度食べたらやみつきになってしまうほどのとろける甘さ。みずみずしく、プルプルとしたたっぷりの果肉。

 

そんな特徴から「柑橘の大トロ」と呼ばれる「せとか」(写真左)という高級柑橘が、みかん王国の愛媛県にあります。旬をむかえるのは2月下旬から3月。シェア7割の生産地愛媛県では、春の気配が感じはじめる、やわらかな風が漂いはじめる2月の終わり頃から、本格的なせとかの収穫シーズンがはじまります。

 

春めいてきた2月の下旬、とろけるおいしさの「せとか」を味わいに、愛媛県宇和島市の柑橘づくり名人のみかん畑を訪ねました。

 

 

おいしいみかんの秘密は〇〇!地域でただ一人が行う栽培法とは

四国の西南に位置し、海と陸が複雑に入り組んだリアス式海岸をもつ愛媛県の南予地方。周辺には「みかんの花咲く丘」という童謡に出てくるような、のどかな光景が広がっています。

 

松山空港から車で約1時間半で到着する宇和島市は、九州との間の豊後水道は宇和海に面し、鯛やはまち、真珠などの養殖産業や柑橘栽培がさかんな南予地方の中心都市です。

 

 

そこで柑橘づくりを営むのは、「柑橘名人」と呼ばれる三浦義博さん、72歳。宇和海をのぞむ山々に約3.5haのみかん畑を所有する、この道約50年のベテラン柑橘専業農家です。せとかや、愛媛生まれの「甘平(かんぺい)」、デコポンの妹分「はるみ」、ブラッドオレンジなど、手がける柑橘類は現在14種。

 

三浦さんがつくる柑橘類はおいしいと評判で、JAを通して市場に出荷しているのをはじめ、三浦さん指名で申し込みをするレストランや個人客など、リピーターが多くいるのだそう

 

多くの人を魅了するおいしい柑橘類づくりの背景には、柑橘農家としての三浦さんの優れた技術にありました。

 

収穫し終わった後の果樹に注目すると……、

 

収穫後の果樹は普通、このように樹勢が弱まり、葉っぱが丸まって休眠状態に入ってしまいます。

 

しかし、三浦さんの果樹はこのとおり。栄養が行き届いているので葉っぱがピーンと広がっています。

ツヤツヤな葉色は、まるで「今年もがんばっておいしい実を成らせるからね!」と言っているかのよう。広がった葉が太陽の光をたっぷりキャッチし、収穫された後も元気いっぱいに活動しているのです。

 

 

どうして、三浦さんの果樹はこんなに元気なのでしょうか?

 

聞くと、大量の煮干しが詰めこまれたダンボールを見せてくれました。収穫を終えた果樹には樹勢を回復させるために肥料を与えるのですが、三浦さんの肥料には、なんと「いりこ(煮干し)」が入っているのです!

 

みかんがいりこを食べているなんて、まさか思いませんよね……?

 

栄養たっぷりのいりこ入りの肥料を与えているのは、宇和島周辺では三浦さんのところだけ。いりこはコストもかかれば手間もかかるので、他の農家が真似したいと思ってもなかなかできないのだそうです。

 

これは来年に向けて発酵途中の、牛糞といりこだけでつくられた三浦さんオリジナルの堆肥。三浦さんは毎年収穫後に畑土を検査分析し、その年々の畑に適した肥料を調合して、果樹の健康を保っています。

 

 

高級柑橘「せとか」のおいしい見分け方

この木は、あと数日で収穫をむかえる、せとかの木。「高級柑橘」という肩書きがついている分、栽培にかかる手間もかなりのものなんだそう。

 

たわわ度がわかるようにと、三浦さんが鳥よけの黒いネットを少し外してくれました。

 

実がつきはじめた初期の頃は、日光にあたりすぎている部分の実一つひとつに日焼け止めのテープを貼っていきます。みかんが色づきはじめた頃に、そのテープをはがし、今度は害獣から守るための黒いネットに一つひとつの実を包んでいきます。

 

やっかいなのが、そうした作業を阻むこの鋭いトゲ!! せとかの木にはバラのような、鋭くて大きなトゲが枝中に生えています。 せとかを世話する時にはそれなりの防護服を着ていくそうですが、それでもやっぱり刺さってしまうし、刺さったらやっぱり痛いのだそうです……。

 

このような手間がかかるため、宇和島のJAでは、3㎏(10~12玉)3,500~4,000円で売られています。単純計算すると1個の値段は約330円。高いものを買うのなら、おいしいものに当たりたいものですよね。

 

三浦さんにおいしいせとかの見分け方を教えてもらいました。この二つのせとかを比べた場合、左側の方が“おいしい”せとかです。理由は茎が細いこと。つまり、ヘタの部分が小さいのがおいしい目印なんです。

 

三浦さん曰く、「ストレスがかかっているみかんの方がおいしいよ。貧乏人の子だくさんみたいに、細い枝にいっぱいなっている方が実に養分を蓄えて甘くなるんだ」。

 

スーパーに行った際には、ヘタが小さいみかんを選ぶようにしてみてください!

 

 

5年かかるものを3年でつくる。小さいころの手のかけ方が分かれ道に

植えてからちょうど1年が過ぎた、ブラッドオレンジの苗木「ちびさん」も見せてもらいました。「来年の今頃にはこのくらいの大きさになるよ!」と三浦さん。

 

普通は、苗木を植えてから果実を収穫できるようになるまでは柑橘類なら早くて5年かかる、といわれています。それが三浦さんの手にかかると、たったの3年で実を成らせるまでに成育させてしまうのです!

 

これは宇和島周辺では三浦さんしかできない驚異的ワザ!!

 

「苗半作と言ってね、苗木を上手に育てればもう半分成功したようなものなの。苗木の時にちゃんと世話をすると、しっかりしたいい木になるんだよ。人間も『三つ子の魂百まで生きる』って言うでしょ、なんでも子どもの時が大事だよね。小さい時にきちんと手をかけて育ててあげれば、しっかりした大人になるんだからさ」

 

毎日みかん山に登っては果樹たちの様子をチェックしているという三浦さん。名人といわれるほど、おいしい柑橘づくりができる三浦さんの秘密は、柑橘に惜しみない愛情を注ぐこと、つまり日々果樹と向き合ってていねいにお世話をしているところにあるようです。

 

「主人はねえ、私といるより、せとかちゃんやはるみちゃんといる方がいい!ってすぐ山に行っちゃうのよ(笑)」と、みかんにヤキモチを焼くのは奥さん。

 

そうこぼしつつも、三浦さんが丹精こめてつくったみかんを使っておいしいみかん料理に変身させるのは奥さんです。この日は、みかんの酸味とおこげがおいしい「さわやかみかんジュースごはん」と、寒天の歯ごたえとみかんのプチプチした食感がマッチした「みかん寒天」をつくってくれました。

 

南予ではよく食べられているみかんの素材を存分に活かした料理が、食卓をきれいなオレンジ色に彩っていました。

 

 

長生きして、“おいしいみかん”をつくりつづけたい

 

仕事の後に見る歌謡番組が一番の楽しみだという三浦さん。カラオケも好きで演歌の鳥羽一郎が十八番だそう。

 

「歌もいいけどやっぱり一番楽しいのは、つくったみかんをおいしいって喜んでもらえたときだね。そして一番の財産は健康。しっかり仕事をして、おいしくごはんを食べること!」

 

明るい人柄が魅力の三浦さんのお宅には、いつも人が集まり笑い声が絶えません。取材日のこの日も、「体が老化してもそのうちホームセンターで修繕できるようになるから長生きできる」という、どうコメントしたらよいか分からない話を近所の方とされていました……。

 

「え? 長生きして何したいのかって……? そりゃ、長生きできた分、またいっぱいみかんを育てるんだよ!」

 

 

柑橘農家は三浦さんにとってまさに天職。三浦さんだからこそできる、愛情がこもった柑橘栽培。そうして育てられた柑橘がおいしいのは、言ってみればすごく当たり前のことなんですね。

 

 

宇和海を眼下にみかん畑の爽やかな風の中でいただくみかん。三浦さんの愛情の深さを物語るかのように、とろける甘さであふれていました。