【愛知県豊田市】時代に合わせて17代目。世代交代した「にこにこ農園」がいどむパクチー栽培 | おうちごはんラボ

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【愛知県豊田市】時代に合わせて17代目。
世代交代した「にこにこ農園」がいどむパクチー栽培

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愛知県豊田市の豊田スタジアム近くの矢作川沿い。そこに、17代続く「にこにこ農園」があります。3代はだいたい100年。商売の世界では、3代続くといい企業だと言われています。17代もの続くにこにこ農園は、遠い昔からこの地と共に歩み、町の生活を支えてきたことが想像にかたくありません。

 

 

そんなにこにこ農園を営んでいるのは、17代目当主の中根たけしさん、ともみさん夫婦、そして今でも現役のかわいらしいたけしさんのお母様です。

 

さらに、未来の18代目当主の長男さんは、「中卒で農家になりたい!」と張り切っているというとのこと。その話を聞いただけでも、とても温かい家庭の様子が目にうかびます。

 

 

壮大な土地で2種の米と40種もの野菜を作る

にこにこ農園には、それぞれ2100坪もの面積の田んぼと畑があります。そこで、お米2種と年間30〜40品種ほどの野菜を育て、貸し農園の経営にも取り組んでいます。

 

田んぼは離れた場所に2箇所あり、1箇所で早稲のコシヒカリ、もう1箇所で晩稲の大地の風、場所ごとに品種を変えています。なんでも、周りの田んぼと同じ品種を育てないと、鳥の被害が多く出やすいのだとか。

 

昔は、学校も田植え休みがあり、地域で一斉に田植えをしたという話を聞きますが、そこには、子どもの手が必要だっただけでなく、収穫時期に、どこかの稲だけが鳥に狙われないようにする意味もあったようです。

 

肥沃な川沿いの畑には、春の入学シーズンを終えた頃、新玉ねぎや新ほうれん草が大きくなりはじめていました。昔と今とでは、育てる野菜の種類が違えば、新たまねぎ一つ取っても、さまざまな新しい品種が出ているといいます。

 

この道60年のお母様でも、今年の新たまねぎの極早生の一つは芽が出なかったというから、農業の難しさを感じます。

 

 

代替わりではじめた減農薬、パクチーの挑戦

にこにこ農園で今人気な野菜は、パクチー、ルッコラ、高菜。豊田市は自動車関連工場が多く、昔から外国人労働者を多く抱えている町です。そんな外国の方がこぞってにこにこ農園の野菜を買いにきて、故郷の料理作りを楽しんでいるんだとか。

 

今でこそ、聞き馴染みのある野菜になりましたが、ご高齢者が好んで食べたり、昔からの農家さんが作るイメージがなかったりしたので、育てるようになった経緯も聞きました。

 

にこにこ農園では、かつて農薬や化学肥料を使って野菜を育てていました。しかし、代替わりするときに、無農薬、減農薬に努め、少しの肥料を使って収穫量を保つことで、なるべく多くの人に低価格で安心して食べてもらえる野菜を育てることに。

 

さらに、市場ではなく、言い値が自分でつけられる産直やJA、朝市で「減農薬野菜」としての販売に重きを置くように切り替えたそうです。

 

そんなとき、ご夫婦がもともと好きだったパクチーを自宅用に育ててみることに。そのすぐ後に、テレビでパクチーのことが紹介されたこともあり、お客さんからパクチーの注文があったといいます。

 

さらに不思議なことに、パクチーの種を少ししかまいていなかった時には収穫率が悪かったのに、ある時たくさんまいてみると、プレッシャーが解けたかのようにすくすく育ったとふりかえります。

 

「期待が重すぎたんじゃない? 仲間が増えたら、“自分が頑張らないと”というのがなくなって、のびのびできたんだと思う。収穫率の問題だけだけどね」と、3人のお母さんでもあるともみさんは、野菜に対してもどっしりと構えている様子でした。

 

こうして、にこにこ農園の代替わり後に取り組みはじめたパクチーは、今や毎週土曜日の朝市の人気者です。

 

 

新玉ねぎの季節におすすめの「パクチーと新玉ねぎのサラダ」

パクチーを苦手という人は多いかもしれません。しかし、「どうやって食べたらいいかわからないだけ」。ともみさんはそう言いながら、キラキラと輝く採れたての野菜で、何品ものお料理をふるまってくれました。

 

その中でも、絶品だったのは、「パクチーと新玉ねぎのサラダ」(http://www.mainichigrillbu.com/ouchigohan/recipe/3244/)。味付けは醤油とレモンをかけただけなのに、なんとも奥深い味わい。ポイントは鰹節です。日本人は、だしの味を口にすると、安心感を覚えると言われているのが納得できます。

 

そして、パクチーや新玉ねぎのシャキシャキ感、オイルサーディンのトロッと感、鰹節のパリパリ感、違う食感の調和が癖になります。オイルサーディンの代わりにイワシの甘辛煮を合わせてもおいしい一品に。

 

パクチーをあまり使ったことがない方も、新玉ねぎの季節にあわせて、パクチーの味を楽しんでみるのもいいかもしれません。

 

「子どもたちも喜んで食べますか?」と聞くと、苦い顔を見せたご夫婦。しかし中根さんは言います。

 

「食卓にいつも上がっていて、大人がおいしそうに食べていれば、いつかね」

 

子どもの好き嫌いには思わず手を焼いてしまいがち。しかし、子どもが自然と手に出してみる時を、待つ。そんな姿勢がきっと子どもの成長に欠かせないことなんだろう。自然のリズムと共に生きる中根家の食卓からそんなことを感じました。

 

 

にこにこ農園が何代もの引き継がれる理由

時代と共に変わる、野菜への要望、新しい品種、嗜好の変化……。その一方で人間が変えられない、自然の流れに合わせて野菜をつくり続ける、にこにこ農園。

 

一言で「農家」と表すには足りないくらい、日々生まれる葛藤と工夫を繰り返しながら、代々引き継ぐものと、新しく入ってくるものとが交錯していました。そこには、常に自然の豊かさと厳しさがそのまま暮らしに反映されているかのよう。

 

「百姓は100の手を持つ職」

 

たけしさんがそう言って働く姿を見て、家族や子どもたちは「農家」として生きていく決意と喜びを感じとっていっているのかもしれません。にこにこ農園がどれだけ代替わりしても、同じようにぽかぽかとした気持ちとおいしい野菜を消費者に届けていってほしいと思います。