「誰にでも売れればいいわけじゃない」銚子の“アフロきゃべつ”から次世代に伝えたいこと | おうちごはんラボ

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「誰にでも売れればいいわけじゃない」
銚子の“アフロきゃべつ”から次世代に伝えたいこと

オフィシャルメンバー 旅人料理編集部

春キャベツの作付面積が日本一である、千葉県銚子市。

銚子市は関東最東端にあり、三方を海と川に囲まれた漁業の街として知られていますが、実は農業もさかん。市内のいたるところでキャベツ畑を目にすることができます。

 

そんな銚子で、「アフロきゃべつ」というインパクトある名前のキャベツが育てられていると聞き、その畑を訪ねました。

 

 

自慢のキャベツを「アフロきゃべつ」と名づけ販売

春キャベツの収穫シーズン真っ只中の4月中旬。JR銚子駅に降り立った私は、銚子電鉄に乗り換え、一面に広がるキャベツ畑を車窓から見つつ、電車に10分ほど揺られ笠上黒生駅を目指しました。昔ながらのレトロな駅舎を出てさらに10分ほど歩くと、アフロきゃべつと思わしき畑が見えてきました。

 

 

まるでアフロのような見た目のキャベツなのかと思っていましたが、畑をよく見てみても、一般的な春キャベツとのちがいはわかりません。そこへ、アフロきゃべつの育ての親である、Hennery Farm代表・坂尾英彦さん(35)が現れました。

 

そう、アフロなのはキャベツではなく、作り手の坂尾さんだったのです。

 

坂尾さんは、この地で代々農家を営むお家の12代目。高校卒業後は東京でDJをしたり、地元でレコード店を営んだり、輸入雑貨や服の販売をしたりして、兼業しながら実家の農業に携わっていました。

 

しかし、子どもを畑で遊ばせたりする中で、「畑で楽しいことができるのでは?」と可能性を感じるようになったといいます。

 

坂尾さんの畑は笠上(かさがみ)という海が近いエリアにあり、土壌のミネラルが豊富。さらにキャベツも海風にさらされるため、銚子のキャベツの中でも甘くてやわらかいものができます。

 

そこで、自身の作るキャベツを「アフロきゃべつ」と名づけ、自ら販売まで行う道を選びました。現在は、銚子電気鉄道「OTS犬吠埼温泉(犬吠)駅」の駅前広場に販売所を設けたり、あちこちで実演販売をしたり、収穫体験を催したりするなどして、精力的にアフロきゃべつのPRをしています。

 

さらに、自社の堆肥小屋を所有するほど、堆肥にはこだわっているという坂尾さん。鶏糞と藁を混ぜて重機で切り返し、発酵を進ませることで、成熟した肥料がキャベツの味を良くするそうです。収穫したてのキャベツを一口いただくと、みずみずしさと甘さが口いっぱいに広がりました。

 

 

「閉鎖的な農業のイメージを変えたい」アフロきゃべつの名前に込めた思い

アフロきゃべつという名前には、坂尾さんのトレードマークであるアフロヘアだけでなく、農業に対する思いが込められています。

 

「インパクトが欲しかっただけではなく、閉鎖的な農業のイメージを、楽しいものに変えてもらい、親近感を持ってもらいたいという思いから名づけました」と坂尾さん。

 

アフロきゃべつは、「坂尾さんが作った笠上のおいしいキャベツ」という商品そのものはもちろん、キャベツ収穫体験を含めた、いわばブランド名。たくさんの親子や学生さんが、収穫体験を通して銚子の風土や農業、アフロきゃべつに興味を持ってくれているそうです。

 

そこで私も「収穫体験をしたい」と伝えたところ、坂尾さんに大きなアフロのカツラを手渡されました。

 

アフロきゃべつの収穫体験の醍醐味は、みんなでアフロヘアになること。参加者の多くが、最初は恥ずかしくて躊躇するものの、だんだんと楽しくなってきて、最後には外すのを忘れてしまうくらいなんだとか。

 

「同じ格好をすることで、一体感もありますよね」と坂尾さん。

 

この日体験に来ていた数組の親子も、アフロヘアになって、夢中でキャベツを収穫していました。

 

実際に体験してみると、キャベツの収穫はなんと全て手作業。大きさ、かたさを手でさわって確かめ、収穫していいものだけを的確に選んでいきます。そして、使うのは農器具ではなく包丁です。

 

坂尾さんは軽々と包丁を入れて収穫していましたが、同じようにやろうとしても、刃を入れる場所や力加減がわからず、きれいに収穫するのがとても難しい……。この体験をするだけでも、農家さんへの感謝と尊敬の気持ちが湧いてきます。

 

市外でもアフロきゃべつを購入できるのかを聞くと、「市外での販売やネット販売はあまり行っていません。まずは、銚子に足を運んで、アフロきゃべつを知ってくれた方に食べてもらえたら嬉しい」と話します。

 

坂尾さんは当初、地元で銚子のキャベツを購入できる場所が少ないことに疑問を持っていました。そのため、ただ誰にでもキャベツが売れればいいのではなく、主に地元の人や、自分たちの活動、生産方法を理解していただいた方々に購入してほしいと願っています。

 

今のところ、遠方でアフロきゃべつを味わえるのは、食材にこだわりのある東京の居酒屋くろきん・和の家さん(http://gateinc.jp/)のみ。しかし、ふるさと納税の返礼品にする予定があるため、銚子に足を運ぶことが難しい方も、アフロきゃべつが味わえる機会ができそうです。

 

 

捨てるところなし! アフロきゃべつを丸ごと味わうレシピ

この日は、アフロきゃべつを使ったおすすめメニュー「キャベツつみれ汁」(http://www.mainichigrillbu.com/ouchigohan/recipe/3442/)を教えていただきました。

 

玉田屋食品さん(銚子市)の無添加イワシつみれのだしと、しおだけで味つけされたスープが、キャベツの甘みを存分に引き出してくれます。

 

キャベツのやさしい甘さが口の中いっぱいに広がり、体に染み渡っていくのを感じました。他にも、しおとごま油で味つけするキャベツステーキなど、なるべく素材そのものの味を損なわない食べ方がおすすめだそうです。

 

坂尾さんは、アフロきゃべつを使った新商品の開発も積極的に進めています。漬物やプリンなどの販売も始まりました。

 

天日干しから漬け終わりまで1ヶ月もかかる、アフロきゃべつを丸ごと使った漬物は、市内外の飲食店や道の駅で大好評。

 

また、市内飲食店で作ってもらっているキャベツプリンは、鮮やかな緑色を出すために、普段捨てられがちな外葉を使っています。教えていただいたキャベツつみれ汁も、芯まで残さず使います。キャベツって、本当は捨てる部分なんてなく、丸ごと使えるんですね。

 

 

アフロきゃべつで銚子を盛り上げていきたい

坂尾さんは、農業の人手不足が進むと、これまで以上に、生産して出荷するだけで手いっぱいになってしまうことに懸念を抱いています。

 

責任を持って農産物を消費者に届けることが大事と考える坂尾さんは、「農業体験や農産物の加工、販売をもっとやっていくべきだと思っていて、できることがあれば他の農家さんのサポートもどんどんしていきたいですね」と言っていました。

 

独自に目新しいことをすることで、周囲からの反感がないのかも気になりますが、「反感を買っている感じはしないです。サポートしてくれる方ばかりで、協力者が増えています」とも話し、この夏からは、農業体験を含めたグランピングをはじめる予定です」と、新たなアイディアも絶えません。

 

「おいしい農作物を作るのはもちろん、消費者に責任を持って農作物を届けたいですし、アフロきゃべつを通して農業や銚子に興味を持ってもらい、盛り上げていきたいです」

 

アフロきゃべつには、そんな坂尾さんの農業や地元・銚子への想いがぎっしりとつまっていました。

 

 

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