「人も鶏も地域もつなげたい」神奈川県西丹沢の標高450mの山奥でいどむ循環型有機農業 | おうちごはんラボ

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「人も鶏も地域もつなげたい」
神奈川県西丹沢の標高450mの山奥でいどむ循環型有機農業

オフィシャルメンバー 旅人料理編集部

神奈川県は西丹沢。県内最高峰の蛭ヶ岳をはじめ、標高1,500mを超える山々が連なる神奈川県の西北部、丹沢地域の西側に位置します。

深い渓谷や大小さまざまな滝があり、ブナやモミなど豊富な樹種の美しい原生林も残っています。

 

都心に近いながらも豊かな自然が残されていて、首都圏からのアクセスがよいことから、四季を通じて多くの登山者がやってきます。

 

一般道から車一台がやっと通れるような山道を上がること15分。

西丹沢の山腹、標高450m。遠くに美しい丹沢の山並みを望むことのできる「くだかけ山農園」の母屋に辿り着きました。

 

ここには、不登校の青少年を受け入れ、家庭教育の場を提供する「くだかけ生活舎」が併設されています。彼らが農業を手伝うことで、自然の中で成長することができる場所です。

 

この土地で循環型有機農業に取り組んでいるのが、和田一良さん、真希さん夫婦。農薬や化学肥料を使わずに四季折々の野菜をつくり、野菜や卵を販売しています。

 

この山で育った一良さんは、中学校1年生のときに仲間たちと鶏100羽を飼い、わずか16歳で農業をはじめた強者です。

 

今回神奈川県の山深い場所で「循環型有機農業」を営む和田さん夫婦に、農業と暮らしについてお話を聞きました。

 

 

「山にいるか、それとも下りるか」。紆余曲折を経て辿り着いた「養鶏」という道

 

一良さんの農業の中で大切な役割を果たすのは「養鶏」です。しかし、その道のりは思ったよりも平坦なものではありませんでした。

 

「中学1年のときにはじめた養鶏は、続けていくうちにえさ代などがかさみ、赤字になりました。だから14歳のときに鶏を山に離したんです」

 

一良さんにとってこれは大きな挫折となってしまい、しばらく養鶏から離れていました。その後大学へ入学。

 

「実は22歳のときに山へ帰って、農業に改めて取り組んでみたんですよ。でも、その後農作業で体を痛めてしまい、数年間はくさくさしていました」

 

そんな充電時期に転機がおとずれました。父親に声をかけられ、なんとなく養鶏場へ行くと、プロの養鶏を実際に見ることができたのだそうです。

 

そこで見た養鶏は、鶏たちが身動きの取れないせまい空間で育てる「ケージ飼い」ではなく、鶏たちが鶏舎内を自由に走り回ることのできる「平飼い」でした。より自然に近い環境でストレスを与えないようにするための飼い方でした。

 

その養鶏方法に衝撃を受けた一方で、周囲の変化も感じていたと振り返ります。「体調は次第によくなっていきましたが、20代後半を迎えた頃、周りの友人が公私ともに落ち着きはじめ、焦りも感じはじめました。この頃周りには『山を下りろ』とよく言われていましたね」

 

また、一良さんが山に残って農業をするには問題がありました。山には開墾して農業をする土地が十分になく、農業だけで生活するにはとても厳しい環境だったのです。

 

山を下りてサラリーマンをするか、山に残って農業をするか——。

 

そんなある日、お店で買った卵を食べていたときのこと。

 

「家で飼っていた鶏が卵を産まない冬場は、お店で買ってきた卵で卵かけごはんを食べていたんです。が、家の卵のようにたくさん食べたいと思わなかったんですよ」

 

そこで家の卵と食べ比べてみると、「これだ! 山で卵を生産して売れば山で農業をしながら生活していける、とここで初めて気づいたんです」。

 

 

「鶏・地域・人」がつながるこだわりの循環型有機農業

こうして本格的にはじまった、一良さんの山の農業・養鶏への道。和田さんご夫婦がいま取り組んでいるのは「有機農業」です。

 

「有機農業」とは農薬や化学肥料を使わずに、自然の力を最大限に引き出し、おいしく安全な野菜をつくる農業。一番のポイントは「土づくり」です。

 

よい土の中には有用な微生物がたくさん生きていて、野菜づくりに適した状態になります。そのような状態にするためには堆肥を畑に入れ、よい土に変えていくことが重要になります。

 

一良さんの畑ももちろん、自らこだわりの堆肥をつくり、畑に入れています。

 

お話を聞いて思ったことは、一良さんの農業には無駄がないこと。そして養鶏と農業は切っても切り離せない関係ということでした。

 

鶏のえさは、近隣で処理に困ったものからつくっています。豆腐屋さんで出たおからや農家さんが販売できないくず米、小学校で出た残りもののパンの耳など。一見不用品でも鶏にとっては大切なえさとなります。鶏舎の床に敷くものも、藁やもみがら、ウッドチップなどご近所さんが処理に困ったものを集めてくるそうです。

 

 

一良さんのこだわりは、堆肥にするまでに「3度発酵」させること。

 

まず、鶏のえさを一旦発酵させて鶏に与えます。藁やもみがらの床の上で鶏のフンが発酵し、その床の発酵物を今度は木箱に入れ1~2週間。3度の発酵を経て、畑の肥料となる「鶏糞堆肥」ができあがります。

 

 

野菜づくりにおいてとても大切なのは、窒素と炭素のバランスがとれた肥料なのだそうです。こうしてつくられた堆肥によって土が豊かになり、安全でおいしい野菜が実ります。

 

「昔の地方の養鶏では不要なものをうまく利用していたんですよ。農業をすることで環境が保たれていたんです。僕も環境を活かす農業をしたいと思っているんです」

 

 

旬の野菜でつくる万能ミルクスープ

環境に負担のない方法で育った、和田さんご夫婦が手がける四季やその土地に合った野菜たち。真希さんに、かぶを入れた、かぶの甘さと風味が活きたおいしいスープ(http://www.mainichigrillbu.com/ouchigohan/recipe/3656/)を教えていただきました。

 

「かぶのほかにも、にんじんや、じゃが芋に季節の野菜を入れてよくつくるんです。朝にサッとつくって忙しいお昼にパパッと食べることができるので、とっても便利ですよ」

 

ごはんにもパンにも合わせやすく、煮詰めてチーズをトッピングしオーブンで軽く焼いてグラタン風にアレンジしたり、ハムやベーコンを入れたりしてもよさそうです。

 

 

「かぶは筋があるかないかが重要です。収穫時期を少しでも過ぎると、すぐに筋張ってしまうため、収穫が遅れないように気をつけています。筋張っているかどうかは、皮に包丁をあててみるとわかりやすいですね。筋がひどいと切りにくく、筋がないとスッと切れます。筋のないかぶは甘く、皮ごと食べられますよ」

 

 

小さなことも楽しい。地域のものを活用して安全な食べ物を

畑のことを教えてくれた一良さん。うまく育たない野菜があったり、失敗もたくさんあったりしたそうですが、農業を心から楽しんでいることが十分に伝わってきました。

 

例えば農業資材のお話。きゅうりの枝が伸びるのを支える「きゅうりネット」は毎年使うもの。

 

「毎年買いかえてもいいのだけど、そうするとゴミの量が半端ありません。こうして次の季節まで木にかけておくと、引っかかった古い枝も枯れてきて落ち、また使えるんですよ。捨てずに済むんです。地味で小さなことなんですけど、次第にコツがつかめてきます。少し工夫して上達するととても楽しいですね」

 

和田さん夫婦が手がける野菜は、一般的な有機野菜の価格帯より控えめな価格で販売されています。その理由も聞くと、一良さんの考えを象徴するような答えが返ってきました。

 

「お客さんが少し手を伸ばせば手に入れられる野菜にしたいんです。そしてこの地域のものを使って安心・安全な食べ物をこれからも提供していきたいです」

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