「魚づくり」が生きがい。愛媛最西端の日振島で養殖される「だてまぐろ」を世界一のマグロへ | おうちごはんラボ

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「魚づくり」が生きがい。
愛媛最西端の日振島で養殖される「だてまぐろ」を世界一のマグロへ

オフィシャルメンバー 旅人料理編集部

愛媛県宇和島市の沖合約28km、四国と九州の間の豊後水道の真ん中に、平安時代の海賊、藤原純友の島として知られる「日振島(ひぶりじま)」があります。

四国本土から最も遠い西の有人島で、なかなか行くのが難しい日振島。しかし、亜熱帯の島かと見ちがえるほどの美しい海に囲まれており、海の美しさだけでいえば一級リゾートにもなりうる島です。

さらに、あまり知られてはいませんが、この島では大きな本マグロ「だてまぐろ」が養殖されています。天然ものと変わらない高品質な「だてまぐろ」は、国内だけでなく世界に向けても出荷されており、アメリカではすでにブランドマグロとして高名になりつつあります。

そのだてまぐろ生産者の福島和彦さんを訪ね、「だてまぐろ」が育つ豊かな海の環境と「だてまぐろ」づくりについて聞いてきました。

 

 

海賊伝説が残る秘島「日振島」へ出航!

日振島へは、宇和海に細長く突き出た三浦半島の西端の「矢が浜」より船で向かいます。宇和島市内から一番遠くて訪れにくい島のため、沖合の離島群の中でも一番の秘島といわれる日振島。

周辺の海域は潮の流れが複雑かつ速いため、ある程度大きな船でないと島へ行けません。

 

宇和海を出て流れの速い豊後水道に入り、日振島が遠くに見えてきました。波のうねりが大きくなり、漁船としては大きなこの19トン船でも揺れます。この辺りの海域は流れが速いだけではなく、深さ100~200mの深海域でもあるのだそうです。

 

平安時代の海賊、藤原純友や伊予水軍が日振島を根拠地としていたのは、島の周りをこんな激しい潮流域にガードされていたからなんですね。たしかにこの潮の流れでは、当時の一般的な手漕ぎ船では島に近づくことすらできなさそうです。

 

矢が浜を出て約20分、喜路港に着きました。今回は取材のため漁船に乗せていただきましたが、公共の交通機関を使う場合は宇和島港から高速船で約1時間です。

 

6月下旬の取材時はテングサ(寒天のもとになる海藻)のシーズンらしく、島中いたるところ、道いっぱいにテングサが干されていました。

海賊のお宝がどこかに隠されているとのロマンあふれる伝説も残る日振島。ゆったりとしたおだやかな島時間が流れる場所です。

 

 

日振島がマグロ養殖に適している理由

回遊魚のマグロは新鮮な潮が入り込むところでないと成育できません。そのため、マグロ養殖が行われているところは、長崎の対馬、高知の柏島、愛媛の愛南町などの海水がきれいな場所に限られています。

そして日振島の海の美しさもこのとおり! 海の底まで見通せてしまいます。

 

島の沖合は小さな船ならひっくりかえってしまうような激しい潮が流れていますが、山に守られた湾内はおだやかで、直径40~50mのマグロの大きな丸いイケスでも設置することができます。

 

また、日振島を上から見ると「W」のような形をしています。2つの島がつながってVの字をつくっているので、湾の入り口だけでなく奥からも潮の出入りがあります。そのため海水の入れ替わりが早く、大型魚を成育していても湾内の海水はよどむことはありません。

そして、マグロの成育には欠かせない海底のきれいな冷たい潮(底入り潮)が2週間ごとに入ってくるので、イケスの水はいつもきれいな上に夏場も水温が上がりません。水深も養殖イケスを設置するのにちょうどよい65~75m、とまさしくマグロ養殖にはうってつけの海なのです。

 

 

大迫力の「だてまぐろ」の釣り上げ

そんな日振島に住んで約50年、マグロ生産者の福島和彦さんとイケスへ同行し、「だてまぐろ」の出荷・エサやりを見学させていただきました。

福島さんは、日振島産本マグロ「だてまぐろ」育成の第一人者。もともとは愛媛特産の鯛やブリの養殖を手掛けていましたが、今から13年前に始まった日振島のマグロ養殖プロジェクトの設立と同時に、マグロ生産に携わるようになったのだそうです。

「マグロ養殖は科学の最先端」といわれ、毎日高品質なマグロをつくるための実験、観察、研究をされています。

 

成魚がいるのは、約千匹の大きなマグロが泳ぐ直径50mのイケス。50mのプールがクロスして2つ入ってしまう大きさなので、かなり大きなイケスです。このイケスから一本釣りでマグロを釣り上げます。

 

宇和島藩初代藩主、伊達秀宗にちなんで名付けられた「だてまぐろ」。高級寿司店や割烹店などで提供されることが多い極上養殖マグロです。

しかし、近頃では国内よりもアメリカでの寿司人気をうけて、アメリカに出荷される割合が多くなっています。数年前よりアメリカに輸出し始め、「だてまぐろ」といえば、高級でおいしいブランドマグロという概念がアメリカでは定着しつつあるそうです。

 

エサと一緒に飲み込んだ釣り針から高圧電流が流れ、一瞬でマグロは仕留められました。

 

動かなくなった「だてまぐろ」をクレーンで吊るして、血抜き、内臓除去などの活け〆処理を素早く行います。マグロの鮮度と味を左右する大事な活け〆作業は、釣り上げから2分以内に済ませます。

 

クレーン操作をしながら、釣り上げた「だてまぐろ」の状態をチェックする福島さん。

 

この「だてまぐろ」は約120㎏。まるまると太った立派な本マグロで、170㎝の福島さんと比べるとその大きさが分かります。

以前は80㎏程度に成長すれば出荷していたそうですが、現在は主にアメリカ向けに出荷しているため、大きく成長しそうな個体はできるだけ大きく育てているとのこと。数日前には150㎏超の「だてまぐろ」も水揚げされたそうです!

 

 

「だてまぐろ」のおいしさのヒミツ

マグロの味を左右するのが、エサやり。この日の幼魚のエサやり担当は、今年から一人立ちした入社2年目の藤本君。将来を担うマグロ養殖のプロになるべく、知識と技術を一生懸命体得中です。

 

マグロのエサの与え方は船底の貯蔵庫より吸い上げた小魚を、40mのイケスに約2千匹いる幼魚に投餌機でとばして与えます。

この日のエサの食いつき具合を藤本君にたずね、噴射する間合いの取り方を指示する福島さん。

 

そして、海の男の常として、身軽な福島さんは、ひょいとイケスの柵にとび移り、魚の食いつき具合を確認します。

「ここの水はマグロが快適と思う水温の間で暖流と寒流が2週間ごとに入れ替わるから、マグロの身がひきしまるの。こんなに恵まれた水質環境でしっかり育っているマグロだから、エサも天然と同じ状態にしてあげたいんだよね」

福島さんは、エサに穀物飼料は使いません。お金も手間もかかりますが、キビナゴやアジとかの生のエサだけを与えています。また、病気になったとしても抗生物質などの薬は一切使わない徹底ぶり。水がいいから病気にはならないといいます。

 

趣味は金魚の女王といわれる「土佐錦魚」づくりという福島さん。帰宅してもなかなか家の中には入りません。

「僕はねぇ、魚が好きなの。魚がそばにいないと落ち着かないんだよね。だから趣味は魚づくり。会社ではマグロ、家では土佐錦ってね(笑)。いつもどうやったらよい魚ができるか、そればかり考えている。だけどそれが一番楽しいんだよね」

くさみがなく、脂乗りもさっぱりしておいしいと評判の「だてまぐろ」。そのヒミツはやっぱり日振島の恵まれた海の環境と、天然マグロと同じ生のエサ、そして魚の生態を熟知し「魚づくりが生きがい」の福島さんが指揮をとる、そのまめまめしいケア=愛情たっぷりの育て方にあるようです。

 

 

日振島から世界一のマグロを目指して

「日振島の海はマグロを育てるのに世界一の環境。だから世界一の海に合うよう、だてまぐろを世界で一番のマグロにしたいんです」と福島さんは熱く語ります。

「今、マグロの養殖は最先端の科学を取り入れています。誰もやったことがない新しい方法をメーカーと僕らとで試している。それが成功するかどうかはまだ分からない。でも、うまくいかなかったとしても、次はどうやったらいいのかっていうヒントは見つけられるし、そこから得られるものは大きいはず。よりよいマグロに育てていくために毎日が試行錯誤、改良の連続ですよ」

だてまぐろのファンになった料亭の板さんたちが、国内だけでなくアメリカからもツアーを組んで日振島までイケスの見学に来ることも時々あるといいます。

「育てた魚が立派になり、その価値を人から認めてもらえたときが一番うれしい。そのために自分は生きている」と、福島さんは笑います。

 

福島さんに教えてもらった「マグロアボカド丼」のレシピはこちら

 

 

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辻水産(株)   http://www.tsujisuisan.jp/index.html

 

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