香川県三豊市(みとよし)、伝統の「三豊ナス」を次世代につなぐため 栽培だけでなく普及活動にも奔走中 | おうちごはんラボ

おうちごはんラボ お役立ちコラム

オフィシャルメンバー

香川県三豊市(みとよし)、
伝統の「三豊ナス」を次世代につなぐため 栽培だけでなく普及活動にも奔走中

オフィシャルメンバー 旅人料理編集部

(画像は、三豊市にて三豊ナスの栽培をされている秋山重義さん)

 

香川県三豊市財田の財田川のほとりで、三豊ナスの栽培をされている秋山重義さん(77歳)。

 

三豊市は自然に恵まれた地形をしており、北側には瀬戸内海に大きく突き出た荘内半島や仁尾港(におこう)があって漁業がさかん、対して、南側は讃岐山脈が連なる徳島県との県境に位置するのが財田町(さいたちょう)です。

 

また、東部から西部に向かっては香川県最大の流域面積をもつ財田川(さいたがわ)が流れ、豊かな田園地帯を形成しています。

 

 

▲畑のすぐ近くを流れる財田川

 

そんな自然豊かな土地で、「三豊ナス研究会」の主要メンバーでもある重義さんに、三豊ナスにかける思いをうかがいました。

 

 

特産品で地域活性化を目指して研究会を発足

▲畑で農作業をする重義さん

 

重義さんが三豊ナスの栽培を本格的にはじめたのは定年退職後。

 

お父さまは、クワやスキなど農具作りの職人で、重義さんも当たり前のように見習いをはじめました。しかし、トラクターなどの農機の普及で職人の仕事が減っていくさまを目の当たりにしたことから、農具職人の仕事に見切りをつけ、知人の紹介で銀行に就職しました。

銀行を定年退職後は、もともとお父さまが栽培されていた桃15本を育てていたそうです。

 

再びの転機は2010年、重義さんが69歳のときです。

2006年に、財田町をはじめとする7町が合併し、三豊市が誕生した際に、地域活性化のためにも、三豊の名を冠した特産品をつくろうという機運が高まりました。

 

その流れで市議の同級生に誘われ、2010年に重義さんを含む約30人の生産者が「三豊ナス研究会」を設立し、本格的な栽培に着手。

その後、研究会では三豊ナスのブランド化をめざし、普及活動に励み、栽培技術を切磋琢磨しながら、市場への出荷・拡大を進めてきました。

 

 

ナスのほとんどが水分、ならば水にこだわる

▲立派に実った三豊ナス

 

三豊ナスが三豊に土着した歴史は、昭和初期に朝鮮半島へ出向いた農家が、おいしいナスを見つけて、種をもち帰ったのがはじまりといわれています。

花が咲いてから収穫するまで25日もかかり、同じ栽培面積でも通常のナスの収穫量の2分の1ほどです。

 

「営利優先の時代には合わないナスかもしれませんね。」

 

そう話す重義さん。

 

経済栽培に向かないのもあってか、生産者も少なく、家庭菜園が主流でしたが、それだけに市場では稀少価値が高いともいえます。昨今では香川県のローカルナスとして人気が高まってきているそうです。

 

▲三豊ナスの根元(左)と、大きいものは直径35㎝もある三豊ナス

 

三豊ナスの特徴はなんといってもその大きさ。一般的な千両ナスの3,4倍の約300~400グラム、大きいものになると500グラムはあります。

重い実を支える茎の根元部分は頑丈で木の幹のようで、葉もとても立派です。

皮がやわらかく、肉質は綿密でみずみずしく、糖度は10度と、フルーツトマトに匹敵する甘さも持ち合わせています。

 

「調理すると、とろりとしてくるのでやわらかさに驚く人も多いんです。

三豊ナスを形成しているほとんどが水分なので、栽培するときの水質には何よりも気を配っています。」

 

と重義さん。

 

 

▲トラックの荷台にタンクを積む重義さん

 

重義さんは、この水分量を生かしたおいしい三豊ナスをつくるために、日本の名水百選にも選ばれた石鎚山の湧き水を利用して栽培している「絹川ナス」の視察に、愛媛県西条市を訪れました。

 

そこの栽培方法に感銘を受けて以来、自分の畑でも自家の井戸水をひいてそこからの水で三豊ナスを栽培するようになったそうです。

 

夏場は、朝夕2回、井戸水を入れた500リットルのタンク4つ分(合計2トン分)を軽トラにのせ、自宅から車で2分ほどの畑に運びます。そのあと、管で繋げた循環パイプで全ての水を畑でまくという、まさに”水にこだわった”仕事をしています。

 

 

品質維持のための苦労は楽しさにかえて

▲三豊ナスの重さを計る重義さん

 

重義さんが栽培している畑の広さは4a(400平方メートル)ほどで、そこの栽培を1人でこなしています。

 

奥様の昭枝さん(74歳)曰く、

 

「実家が農家で、小さい頃から手伝いをさせられたので、農家でない人に嫁ごうと思っていて。定年後はゆっくり桃でもつくっていればいいのに三豊ナスの栽培をはじめちゃって(笑)。そやから、なるべく手伝わないようにしてるのよ」

 

それを聞いた重義さんは、

 

「だまされたっていうんですよ」

 

と、仲むつまじく笑いあうお2人。

 

手伝わないといいながらも、出荷時の袋詰めは奥さんの昭枝さんがしっかりお手伝いをしています。

 

今までは畑の雑草も昭枝さんが刈っていましたが、2017年に昭枝さんの負担をへらすために除草剤の使用をやめ、代わりに雑草が生えるのを防ぐ防草シートを導入したそうです。

 

▲枝をテープナーで固定する作業

 

 

「昨年は台風の被害に悩まされてね。実が傷つきやすいナスにとって風は大敵なので、2017年は防風シートを固定したり、テープナーで実を固定したりと工夫しましたよ。毎年いろんなことをやってみるんです。苦労しているようで楽しんでやってます」

 

 

手間のかかる調理方法よりシンプルが1番!

▲三豊ナスの食べ方は「シンプルな味付けが一番」と笑う重義さん・昭枝さんご夫妻

 

三豊ナスの1番おいしい食べ方をうかがうと、重義さん・昭枝さんはそろって、「焼きナス」 が一番! とのこと。みずみずしい果肉は焼くと、とろりとした食感で甘みが倍増します。

 

「焼きナスやったらなんぼでも食べられますよ」

「調理も味もシンプルなんが1番です」

 

▲ショウガじょうゆにかつお節でいただく焼きナス

 

焼きナスは、ショウガじょうゆで、さっぱりといただくのが良いそうです。三豊ナスはその大きさから、1個で千両ナスの3,4本分相当の栄養を一気に接種できます。ナスは身体を冷やす鎮静作用があるというので、三豊ナスの焼きナスは、暑い季節を乗り切るにはぴったりの1品です。

 

ただし、家庭の魚焼きグリルでは高さが足りず入らないので、オーブントースターでつくるのがミソとか。

 

焼きナスのレシピはこちら

 

 

原動力は、「三豊ナス」を知ってもらいたいという志

▲1つずつ袋詰めされて市販されている三豊ナス

 

「三豊ナス研究会」において、重義さんは銀行員時代に培ったノウハウを活かし、ホームページや資料の作成から、自分の足で動いて活動の幅を広げる広報的な役割を担っています。積極的に香川県主催の異業種交流会に参加し、青果会社を通じての生食販売や、食品会社での加工品販売につなげてきました。

 

「三豊ナスを知ってもらいたい、食べてもらいたい」という思いが重義さんのフットワークの軽さにつながっているといいます。

 

研究会では、三豊ナスを後世に伝えていく、という命題もあります。

そのために、大人はもちろん、子どもたち向けの料理教室や試食会を主催したり、三豊市内の小中学校の給食に提供もしてきました。

 

研究会のメンバーは、退職後に栽培をはじめた方たちが多く、若い方で50代と生産者の高齢化の問題を抱えています。

研究会メンバーのお子さんたちも別の仕事がある場合が多く、後継者問題は大きな課題です。

 

「もっともっと三豊ナスの魅力を知ってもらい、生産者を増やしていかないと」

 

そう語る重義さんは、バイタリティに溢れていて、年を重ねるのもいいものだな、と感じさせてくれました。

会の思いを背負いつつ、栽培や普及活動に邁進する重義さん。今日も明日も奔走し続けます。

 

マルチグリルに関する
お問い合わせ