生産量日本一! 生姜の産地、高知県の農家に聞く生姜への想いと葛藤 | おうちごはんラボ

おうちごはんラボ お役立ちコラム

オフィシャルメンバー

生産量日本一! 
生姜の産地、高知県の農家に聞く生姜への想いと葛藤

オフィシャルメンバー 旅人料理編集部

寒い冬に、体をぽかぽか温めてくれるものといえば生姜(しょうが)。料理では、肉や魚の臭み消しや風味付けなどに欠かせない名脇役、漢方では生薬のひとつとして多方面で使われている、まさに万能選手です。

そんな優れた野菜である生姜の、国産シェア4割以上を占めるのが日本一の生姜生産県、高知県。2016年度の農林水産省「作物統計」によれば、その生産量は22,200tと2位の熊本県の5,350tの4倍以上と、ダントツの日本一で、毎年秋に生姜の収穫作業が行われます。

今回は、収穫シーズン真っ最中の秋に、高知県土佐市のベテラン生姜農家を訪ねました。

 

深まりゆく秋を感じる高知の風物詩、生姜の収穫と土佐市

熱帯性植物で高温多湿を好む生姜は、日照量と降雨量がともに多い高知の風土にうってつけの作物。高知県では約5万1千トンといわれる国産生姜のうちの4割強、2万2千トンあまりを生産しています。

県内では秋も深まる10月の終わりから11月初旬にかけて、緑の生姜畑の中にたくさんの人々とオレンジや青のコンテナが並び、収穫作業がはじまります。人海戦術で一斉に行われる様子は、秋の風物詩そのもの。

生姜のいい匂いが漂い、活気づく畑周辺は、さながら美しい絵画のような印象的な風景です。

 

今回伺ったのは、高知県中部に位置する土佐市。県内で一番面積の小さな市ですが、生姜生産量は四万十市、高知市に次いで県内第3位。生姜畑の面積率は県下で一番です。

 

取材日は11月にもかかわらず夏日のような強い日差し。快晴の太陽の下、市内のあちこちの生姜畑で収穫作業が行われていました。

 

シーズン中は収穫されたばかりの生姜が次々に運び込まれ、この大きな冷蔵庫がいっぱいになるそうです。

 

 

生姜をつくり続けて30年のベテランに聞く。生姜の栽培方法とその苦労

生姜づくり30年の経験と「JAとさし」の生姜部長として日本全国を行き来し、生産を向上させるための知識や技術を仕入れている江渕成将(えぶち・しげゆき)さん、60歳。

 

(写真キャプション:収穫を終えた、江渕さんの畑)

江渕さんは土佐市内に90アールの生姜畑を所有していて、日々、生姜の育成に奮闘しています。

ここで生姜収穫の一連の流れを聞いてみると、基本的には収穫が終わった畑は12月から春にかけて、土のコンディションを整える作業を施し、また4月上旬頃に種生姜を植えつける生産サイクルに入るそうです。

 

意外と知られていないことなんですが、実は生姜は芋類と同じく、種生姜から増えていくのだとか。

工程を時期ごとに追っていくと、3月~4月下旬頃に種生姜をこのくらい(10cm~15cmほど)の大きさに割って、土に埋めていきます。

 

5月以降は、そこから肥料やりに防虫作業、そして乾燥させないためのこまめな水遣りに、その他もろもろの細かい作業をして育てていきます。

そして、ここからが生姜農家最大の試練である “梅雨” へ突入。

 

生姜には、梅雨にかかりやすい伝染病がいくつかあります。

その威力は、伝染病の発見が遅れたり、適切な対処ができなかったりすると、最悪の場合は畑が全滅してしまうほど。そのため、病気が特に心配されるこの時期は、消毒や畑に入る時には靴を履きかえるなどして畑の中にはいつも以上に気を配って清潔に保つ努力をしているとのことです。

 

「病気が出たってなったら、そこの部分だけでおさめて他への罹患を絶対に阻止しなきゃならんし、それが大変なんだよね。これなら効くよ、って新しいものをメーカーさんたちがいろいろ持ってきてくれるんだけど、100%大丈夫ってことにはならんだろうし……。

 

将来の後継者問題よりも、生姜を病気にさせないために何が必要か、病原菌を死滅させるためには今何をすべきか、ってそっちをずっと考えてるね……」

と、真剣な表情を見せる江渕さん。収穫の秋までは、なかなか安心できない状況が続きます。

 

 

一年の成果が形となって現れる収穫期

そんな厳しい梅雨と夏の時期を乗り越えた先には、待ちに待った収穫の秋が。

やっぱり収穫の時は、一年の苦労が吹き飛ぶほど嬉しいものなのだそう。

春に埋めておいたひとつの種生姜が11月の上旬頃には5~6倍以上に成長し、いよいよ収穫できるようになります。

 

「茎の付き方とかでだいたい予想は付いているんだけど、実際に大きな株が土の中からゴロゴロ出てくるとすごく嬉しいねぇ。ああ、こんなに収穫量が増した! って。香りもそうだけど、僕ら農家が実際気にしてるのは収穫量だから。一年頑張った成果が土の中から大きな株になって現れた時が、生姜農家の醍醐味だよねぇ」

と、江渕さんはにっこり。

手間を惜しまず育ててきたものが、こうして秋に実るのです。

 

 

仕事を終えての晩酌と旅行が楽しみ

そんな江渕さんの楽しみは、一日の仕事を終えての晩酌。 ”いごっそう(酒豪)”でもある彼の一番好きなのはビールだそうですが、冬の季節は高知特産の「沖うるめ」の干物を片手に、高知産の栗焼酎や芋焼酎で一杯やるのが至福のひと時なのだとか。

また、生姜のプロとして

「しょうがをシロップにしてワインに入れても体があったまっていいよ」

と、寒い時期にピッタリなジンジャーホットワイのレシピを教えてくれました。

 

ジンジャーホットワインのレシピはこちら

 

JAとさしの生姜部長として全国のいろいろな町を訪れている江渕さんは、旅行がお好きとのことでプライベートでもいろいろな都市を訪れているそうです。好きな町はどこですか?と尋ねてみると、

「自分があったかい所に住んでるせいか、厳冬の北海道に魅かれるんだよね。厳しい自然を相手に頑張る人のパワーが感じられるからかなぁ……。それに、凍てつく寒さの中で飲む一杯がまた最高なんだよね!(笑)」

と、やはり高知県の“いごっそう”らしい答えを返してくれました。それに生姜があれば、どんなに寒いところでも体の中から温まりますもんね。

時間がとれたら、また冬の北海道に行ってみたいとのこと。収穫が終わってひと段落したら、ぜひとも時間をつくって、北海道で本場のほっけをつまみながら一杯やって、次のシーズンに向けての英気を養ってほしいと思いました。

 

知識と経験を備えた人が整った環境の下で一生懸命に育てているから、野菜がおいしく育ち、最終的にスーパーに並びます。私たちがおいしいものを食べられるのは、生産者さんの努力と自然の恵みがあってこそだと改めて考えさせられた、生姜農家さんでのひと時でした。

マルチグリルに関する
お問い合わせ