彼女の思い出の味をたどって――。エクアドルのジャングル生活で食べたピースフルな「エンパナーダ」 | おうちごはんラボ

おうちごはんラボ お役立ちコラム

オフィシャルメンバー

彼女の思い出の味をたどって――。
エクアドルのジャングル生活で食べたピースフルな「エンパナーダ」

オフィシャルメンバー 旅人料理編集部

とても気持ちの良い太陽の光が差し込んだ、2月のある日。

住んでいるドイツのベルリンから、電車で揺られること約1時間。私は、ブランデンブルク州にある小さな村「カプート」に向かいました。

日本では、なかなか名前を聞かない「カプート」。しかしドイツでは、アインシュタインの別荘があることで知られる、自然がとても美しい村です。

 

▲アインシュタインの別荘のお庭に広がる景色。

 

今回のカプートへの小さな旅の目的は、友人の娘さんに会ってお話を聞くこと。高校を卒業したばかりの彼女は、以前私に会うなり「来月、エクアドルのジャングルに行って動物たちを保護するボランティアをしてくるの!」というほど、とても活発な女の子でした。

「エクアドル!? ジャングルで動物たちを保護するボランティア!? そんなことを経験した人、周りにいたことがない。ぜひ帰ってきたら、お話を聞かせて!」と大興奮で、約束をしました。

その約束のお話を聞きに、ワクワクしながらカプートに向かった、私。友人の家に着くと、日当たりの良いキッチンに案内されました。そこには、色とりどりの野菜たちが。今日は彼女がエクアドルで出会った「エンパナーダ」を作りながら、お話をしてくれるそう。

 

 

エクアドルのジャングルで動物保護ボランティア

「学校を卒業してから、何かボランティアがしたかったの。それでインターネットでいろいろと調べてみたら、ソーシャル系のボランティアは医療関係の資格が必要なものばかり。でも一つだけ資格がなくても、できるものがあったの。それが動物保護ボランティア」

すぐに動物保護ボランティアをすると決めた彼女は、さらに詳しくインターネットで調べ、条件の合う募集を見つけました。その場所は、なんとエクアドルのジャングル。あっという間の決断と行動で、エクアドルのジャングルへ旅立ちました。

 

▲吊り橋の先がジャングルの入り口。滞在するボランティアたちの宿舎があるのだそう

 

ボランティア中の会話は基本英語。オーガナイザーはオランダ人。ボランティア仲間たちは、ドイツ・フランス・イタリアなどヨーロッパの国の人たちが多かったそう。

滞在するボランティアたちの宿舎では、毎日シャワーは使えたそうですが、使える水の量は限られているため少量。みんな何も言わなくても自主的に節水をしているという環境でした。使える電気量も制限されていて、持参したソーラー充電器でスマホを充電したり、Wi-Fiも時々しか使えなかったり。

でも美しい大自然の中で生活しているうちに、それはそんなに重要なことではないんだなという印象に変わっていったのだそう。

「夜はヘッドランプを使って本を読んだりしていたけれど、蚊がたくさん集まってくるのが大問題だった!!!」

彼女の話す姿からは好奇心が強く伝わってきて、話を聞いている私自身もなんだかワクワクしてきました。

 

毎日のお仕事スケジュールは、朝起きてホワイトボードを見て確認。動物たちのケージをお掃除したり、餌をあげたり、内容はその日によって変わるそう。

「ここにいる動物たちは、みんな保護されてやってきた動物たちなの。たとえば、ホステルで飼われていたけれど虐待を受けたプーマや、密輸された動物たち。元気な状態になるまで、みんなでお世話をして、ジャングルに無事戻すまでがこの団体のミッションよ」

 

元気になった動物たちは、現地の専門スタッフによってジャングルの奥の方に戻されていきます。しかし、野生に戻そうとしても、専門スタッフのあとを追いかけて戻ってきてしまい、失敗するケースもあるのだとか。

 

 

ジャングル生活で忘れられない「エンパナーダ」

そんな忙しない中で彼女の楽しみだったものの一つは、ごはんを食べること。冷蔵庫がないので、ボランティア宿舎にある食料は常温で保存できる野菜だけ。2週間に一度、現地スタッフの方が街まで食料の買い出しに行ってくれたものを使います。
また、1週間に一度オフの日があり、その日は街まで片道1時間かけて出かけることができたそう。オフの日に、彼女が友だちと一緒に出かけた街の売店で出会ったのが、南米やスペインなどラテン系の国でよく食べられている料理「エンパナーダ」でした。

エンパナーダは、初期イスラム国家・ウマイヤ朝のイベリア半島支配の頃に、スペインとポルトガルで広く食べられていた「muaajanat」(ムアジャナット)が起源だという説があります。

 

彼女にとって初めてのエンパナーダ。作りたての香ばしい香りと、ギュッと詰まった具たちのあまりにもおいしいその味にひとめぼれだったのだそう。宿舎に戻ったあと、もう一度食べたくて友だちと再現してみることにしたといいます。

作り方を誰かに教わったわけではなく、彼女たちは食べた「エンパナーダ」のことを思い出しながら、どうしたらあの味を作ることができるのか、試行錯誤を繰り返しました。通常「エンパナーダ」にはお肉が入っていますが、宿舎には常温野菜しか常備されていなかったので、ベジタリアン仕様にアレンジ。

「友だちと一緒に、ボランティアスタッフ全員の20人分も作ったの。5時間もかかって、本当にとっても大変だった!! でも、それもとても楽しかった大切な思い出かなぁ」
ドイツに帰ってきてからも、彼女は大好きな「エンパナーダ」をよく作るそう。

エンパナーダは、中身の具をアレンジすれば、ビーガン・ベジタリアン・肉食者でも、誰でも食べることができる多様な食べ物。残り物だって生地で包んでしまえば、おいしい「エンパナーダ」に変身します。

「とてもピースフルな食べ物なところが、エンパナーダを好きなもう一つの理由なの!」

彼女は、キラキラの笑顔で教えてくれました。

 

 

ジャングル生活での大切な学びを伝えてくれた「エンパナーダ」

「エクアドルのジャングルには、何にもなくて、何でもすぐに買えなかった。でも、何にもないところで生活していても、必要なものはあるもので作れるし、いつも必要だと思っていたものが実は必要じゃなかったということを知ることができたの。これは、とても大きな学びだったと思っている」
ドイツに戻ってきてから、必要なものは可能な限り手作りをしたり、あるもので代用策を考えたりするようになったという彼女。
そうお話しながら彼女が作ってくれた「エンパナーダ」は、ジャングルで友だちと一緒に作ったものと同じ、お肉が入っていないベジタリアンバージョンでした。ジャングル生活をきっかけに、お肉を食べることをやめてベジタリアン生活に挑戦しているのだそう。

 

 

私にとっては、初めて食べるエンパナーダ。

彼女が作ってくれた「エンパナーダ」は、野菜のやさしいだしと、彼女の動物たちへの思いが伝わって来きて、なんだか気持ちがほっこりする味でした。

彼女の思い出とともにドイツにやってきたエンパナーダは、ジャングルの情景が加わり、きっと日常生活のお店で出会うよりも、特別なスパイスが加わって、さらにおいしく感じたのだと思います。

今度は私が、彼女の思い出話を聞いてワクワクした感情をのせて作ってみよう。そうしたら、またちがった味になるのではないでしょうか。彼女にも食べてもらって、あのキラキラとした笑顔が見られるといいなと思います。

 

 

エンパナーダ(ベジタリアンバージョン)のレシピはこちら

 

————————————————————————————————————
KiKi・イラストレーター
西伊豆の小さな村から、旅するように生きて辿り着いたベルリンに住んで3年目。
HP: http://kiyonosaito.com/
Instagram : https://www.instagram.com/kikiiiiiiy/
————————————————————————————————————

マルチグリルに関する
お問い合わせ