2019.11.11UP
二十四節気に合わせて心と体を整える“雨水”
二十四節気(にじゅうしせっき)を意識しながら、自分の内側に耳を傾け、自然の流れに沿った食事を通して、健やかで彩り豊かな毎日をおくる。第20回は「雨水(うすい)」です。
雨水とは2月19日~3月4日頃、空から降るものが雪から雨に変わり、氷が溶けて水となる…やっと寒さが緩んでくる時季です。これまで寒さで乾燥していた大気が少しずつ潤い、芽吹きの準備を迎えます。
そして3月3日は桃の節句です。女の子の成長を祝う日で、正しくは「上巳の節句」と言います。桃の花が咲く時期、桃は魔除けの効果があるものとして「桃の節句」と呼ばれるようになりました。桃の節句でお馴染みのひな人形は、古くはこの日に「流し雛」を川や海に流し、自分の厄を流してお祓いすることに始まります。現在はひな人形を飾ることで災いが降りかからないように、また美しく成長して幸せな人生を送れるようにという願いが込められています。母と娘が一緒に飾り付けすることで愛情が受け継がれていくひな人形は日本の古き良き文化の1つですよね。
さて、桃の節句で食べ物…と言えば「ひなあられ」に「菱餅(ひしもち)」。ひなあられは関東と関西で見た目も味も全く違うことをご存知でしょうか?関東のひなあられは米粒の形をしていて甘さがあるのが特徴。米をはぜて作ったポン菓子に砂糖をまぶしてあります。一方で、関西は直径1cm程度の大きさで、醤油味や塩味などがあり、餅からできています。最近ではナッツにコーティングしたものをはじめ、マヨネーズ味やチョコレート味なども登場し、より食べやすいものに変化しているようです。
そしてひな祭りに欠かせない菱餅。古代中国で上巳節に食されていた母子草(ハハコグサ)を入れた餅を食べる風習が由来と言われています。母子草とは春の七草のひとつ御形(ゴギョウ)のことです。それが日本に伝わったのですが、母子草は母と子をついて餅にするのはどうか、という懸念からその時期に旬を迎える蓬(よもぎ)が用いられるようになりました。蓬は香りの強い野草であり、昔から香りの強い物には邪気を払う効果があると言い伝えがありましたので、蓬が菱餅の1番下に使われることが定番化されました。菱餅の中央にある白い部分には菱の実を潰したものが入ります。菱の実には子孫繁栄、長寿、清浄、純白の雪のイメージがあります。1番上の桃色部分はクチナシの実で色付けがされます。クチナシには魔除け、解毒作用、桃の花のイメージがあります。ここで疑問に思うのがなぜ菱型なのかといこと。それは菱の実に似せていること、陰陽説で菱型は女性の象徴であることから由来しています。さらに、古来心臓の形は菱型とされていたため、生命力の源になるよう大地を表し、「生命力と子孫の繁栄に」といった意味が込められているようです。角を取るに倣い、角から食べると縁起が良いと言われています。
このように、行事食には様々な歴史があります。古来より受け継がれてきた意味をしっかり知ることが行事の正しい伝承。季節を感じながら行事食について自分なりに調べてみると新しい発見があるかもしれません。
出典
「二十四節気に合わせ心と体を整える」村上百代
「トウキョウガス うちこと」(WEB)
「オールアバウト 暮らし」(WEB)