2019.11.11UP
台湾の家庭料理&朝食の定番「カヤトースト」を堪能! 食で知る、シンガポールの“普通の”暮らし
面積は東京の3分の1! 小さな国土に高層ビルが立ち並ぶ大都会
4年ほど前、8ヶ月に渡る世界一周の旅の終盤で、東南アジアのシンガポールを訪れました。
シンガポールはマレーシアの南に位置し、国土面積は東京都の3分の1と、非常に小さい国です。また、建国されてからたったの50年しか経っていません。
多くの人はシンガポールについて「先進的な国」「高級ホテルや高層ビルが立ち並ぶ大都会」というイメージを持っていると思います。実際に行ってみると、やはり街並みは洗練されていて、この国の発展の度合が伝わってきます。
▲シンガポール随一のショッピングエリアとして有名なオーチャード・ロード。東京でもこんなにネオンが眩しい通りはないかもしれません。
多くの観光客は「マーライオンって意外に小さいな」「すごい都会だし、料理も美味しくて最高!」と、イメージ通りのシンガポールで満足して帰るでしょう。
でも、僕はそれだけでは帰れません。きらびやかな都会の裏には、絶対に別の顔があるはず。もっとシンガポールで生活している人と触れ合い、本質に触れたかったのです。
シンガポールの人々は、一体どこで暮らしているのか?
シンガポールを訪れる前、インドのバラナシで、偶然にもシンガポールへの留学経験があるという日本人に出会いました。彼から現地に住む友人を紹介してもらっていたので、早速合流しました。
友人の名はライアン。シンガポールのIT企業でデザイナーをしています。彼は台湾人で母親と一緒にシンガポールに移住してきたそう。シンガポールは移民を受け入れて成長した国なので、彼のようにスキルを持った人が海外から移住するケースが多いのです。
▲僕が持ってきた納豆汁を食べるライアン
私たちは出会ってすぐに意気投合し、その日はライアンの家に泊めてもらうことになりました。早速、中心地からバスに乗り、ライアンの家へ向かいます。
バスに乗っているとき、ふと疑問が湧いてきました。
シンガポールの人は、どこに住んでいるんだろう?
東京のたった3分の1の国土面積に対し、東京の人口が約1000万人、シンガポールが約600万人です。実は東京よりも人口密度が高いのです。僕たちがさっきまでいた都心は商業ビルが立ち並び、人が住むようなところではありません。ライアンに疑問をぶつけてみたところ、彼から興味深い答えが返ってきました。
「シンガポールに住む8割の人は、中心地から離れた団地に住んでるよ」
バスで1時間弱。ライアンが住んでいる巨大な団地に到着しました。
日本でいうと神奈川、埼玉、千葉のベッドタウンにある団地に似ています。シンガポールは日本の関東圏と同様、ドーナツ構造で人口が分布しているのです。
さらにここからがシンガポールの団地のすごいところ。団地の1階にはレストランが併設されており、スーパーマーケット、さらに結婚式場まであります。
近くには市場も。団地の敷地内とその周辺に、生活する上で必要なものが全て揃っているのです。
▲団地の近くにある市場
ビーフンやおこわ……台湾の“母の味”に舌鼓
シンガポールの団地の規模に驚きキョロキョロしているうちに、ライアンの家に到着。家に入ると、ライアンのお母さんが温かく出迎えてくれました。
▲僕が持ってきた納豆汁を食べるライアンのお母さん
ライアンのお母さんに挨拶すると、家に着いてからものの数分しか経っていないにもかかわらず、有難いお言葉が。
「お腹すいてる?ご飯あるからお食べ!」
ライアンのお母さんはあまり英語が話せませんが、僕は言語や国を超越したものを感じました。
「久しぶりに実家に帰ったときの、僕のお母さんと一緒だ」
どこの国でも、お母さんは偉大な存在ですね。
ライアンから聞いた話によると、シンガポールに住む人々は「ほとんどの食事を外食で済ませる」そうです。しかし、この日は僕のために用意された、たくさんの料理が待っていました。
・おでん
日本ではコンビニなどで良く見かけるおでんですが、台湾ではおでんのことを関東煮(かんとうだき)と言います。先述した通り、ライアン一家は台湾人なので台湾料理がメインです。
・チキン
シンガポールといえばチキンライス!ということで食卓にはチキンライスが出ました。鶏肉にたれをつけて、ご飯と一緒に食べます。
・米苔目(ミータイムー)
米粉で作られた台湾ではメジャーな麺料理。薄味で優しい味。見た目と食感はうどんに似てました。
・ズッキーニと卵の炒め物
ズッキーニの皮をむいて、卵と炒めたおかずです。味付けは薄味でした。
・油飯
もち米を使った台湾風おこわです。チキンと合います。
・手羽先
日本でも居酒屋などでよく見る、手羽先の揚げ物です。
・台湾ビーフン
米粉から作られているビーフン。これも台湾ではメジャーな麺料理です。
全体的に味付けは控えめで、まるで実家のご飯のようです。まさに「台湾のおふくろの味」でした。
量・品数ともに多く、結局食べきることはできませんでした。中国や台湾では「全て食べきる」=「足りなかった」という意思表示になるため、あらかじめ食べ切れないほどの料理が並ぶのが普通です。むしろ「食べきらない」のがマナー。国が違うとテーブルマナーも大きく異なります。
キッチンを見てみると、何やら見慣れない設備が……。この穴はなんでしょう?
実はゴミ棄て装置のダスト・シュートでした。団地の部屋全てに設置されており、ゴミ捨てがかなり楽そうです。
朝食は定番のカヤトースト! 一風変わった食べ方とは?
次の日の朝ごはんは、ライアンから提案がありました。
「シンガポールに住む人々は3食外食が多くて、朝食もレストランで取ることが多いんだ。一番メジャーなカヤトーストを食べに行こう。」
団地に併設されているレストランに行き、カヤトーストを注文しました。
パンに入っているジャムは「カヤジャム」と呼ばれ、ココナッツミルクに砂糖と卵、ハーブを炊き込んだジャムです。このジャムがめちゃくちゃ甘い!のですが、一緒に挟まっているバターとココナッツミルクの風味が合わさって、なんとも言えないクセになる味。
さらに、カヤトーストには現地流の面白い食べ方があります。カヤトーストを注文すると、付いてくるのは温泉卵。温泉卵に醤油を垂らして、かき混ぜ……。
カヤトーストをつけて食べます。これが現地の食べ方です。甘さとしょっぱさが絶妙に混じり合い、悪くはないのですが、個人的には別々に食べたいかなと思いました。
共働き家庭の強い味方「ホーカー・センター」
さらに、シンガポールの代表的な食文化の一つが「ホーカー・センター」です。
専業主婦はほとんどいないというほど「共働きが普通」のシンガポール。それに合わせて1日3食がほとんど外食になっており、安価な食事ができる屋台の集合体である「ホーカー・センター」が身近にあります。
▲庶民的な屋台が軒を連ねる「ホーカー・センター」
ホーカー・センターでは、ココナッツカレー味の麺料理「ラクサ」や、豚肉をスパイスで煮込んだ「パクテー」を食べました。現地の人に特に人気があるのは、やっぱり定番のチキンライスです。
僕が訪れたホーカー・センターは、家族連れや友人同士のグループ、カップル、一人客など、様々なお客さんで賑わっていました。
食で知る、シンガポールの日常風景
ライアンの家で食べた家庭料理やカヤトーストなど、現地の食を通じ、それまで持っていたシンガポールに対するイメージが大きく変わりました。
オーチャード・ロードのような華やかなシンガポールとは対照的に、8割の人々は郊外の団地に住み、市場やホーカー・センターを利用しながら庶民的な生活を送っています。
めまぐるしい経済発展の裏側には、建国から変わらずに息づくシンガポールの日常がありました。食を通じた“普通の暮らし”を垣間見て、よりこの国に親近感が湧き、印象深い旅の思い出になりました。