【世界の郷土菓子 レシピ&トリビア】 Vol.2 パラグアイの郷土菓子「アルファフォーレス(Alfajores)」

こんにちは! 旅するパティシエ・鈴木文です。

そんな私のお仕事の礎になっているのが、世界一周の旅の経験。これまで世界50カ国以上を訪ね、500種類以上の郷土菓子を学んできました。

その旅は、ただ見たり食べたりするだけの旅でなければ、単なるレシピ調査でもありません。現地の人々と一緒に、現地のお菓子をつくりながら旅することで、その国や地域の歴史・文化・風土を紐解いていく旅。

その旅の様子とお菓子のストーリーは、連載「世界の郷土菓子をつくる旅」で13回にわたり綴ってきましたが、ここでは、それらの記事の中に登場した、お菓子のレシピ&トリビアをご紹介していきます!



第2回は、「現地在住50年の日本のお母さんに習う!?パラグアイの郷土菓子『アルファフォーレス』づくり」

南米・パラグアイの首都、アスンシオンで学んだレシピ&トリビアをお届けします!

パラグアイの郷土菓子「アルファフォーレス」のレシピ




アルファフォーレスの材料 (直径5~8㎝のものが約25個分)

・無塩バター …200g
・グラニュー糖 …100g
・コーンスターチ …300g
・薄力粉 …150g
・ベーキングパウダー …小さじ2
・バニラパウダー …お好みの香り分を少々
※日本で作る際は、手に入りやすいバニラビーンズやバニラオイルを使用
・卵黄 …3個分
・ライムの皮 …約1個分
・牛乳 …少々
※最後に纏める時の状態をみて、水分量が必要なら牛乳を少々足す
・ドゥルセ・デ・レチェ(ミルクキャラメルクリーム) …約200g
・ココナッツファイン …お好みで

アルファフォーレスのつくり方

※下準備
・卵は室温に戻しておく
・バターはポマード状(柔らかいクリーム状)にしておく
・コーンスターチ、薄力粉、ベーキングパウダー、バニラパウダーは合わせてふるっておく
・オーブンは180℃に余熱しておく

  1. バターとグラニュー糖を合わせて、全体が白っぽくなるまで混ぜる。
  2. 卵黄を加える。
  3. ライムの皮を削って加える。
  4. ふるい合わせたコーンスターチ・薄力粉・ベーキングパウダー・バニラパウダーに「3」を加える。
  5. 手で混ぜ合わせ、ひとまとめにする(纏まりにくい場合は、牛乳で調整する)。
  6. 生地を冷蔵庫で約1時間以上、寝かせる。
  7. コーンスターチ(分量外)をまぶした台の上で、めん棒を使って、生地が5~7㎜程度の厚みになるよう、平らに伸ばす。
  8. お好みの型で抜いて、クッキングシートを敷いた天板に並べる。
  9. 温めておいたオーブンで12分焼成したら、粗熱を取る。
  10. 「9」で焼き上がったパーツで、お好みの量のドゥルセ・デ・レチェを挟む。
  11. ドゥルセ・デ・レチェを接着に使い、ココナッツファインを飾る。
  12. 12. 完成!!


パラグアイの郷土菓子「アルファフォーレス」のトリビア

①お菓子の名前の由来は??

この郷土菓子は、かつての宗主国であるスペインから伝わったもの。ですがなんと、そもそもの誕生の起源は中近東といわれ、「アルファフォーレス」という名前も、アラビア語の「挟む」という言葉に由来していると考えられています。

中近東で誕生した郷土菓子が、イスラームのイベリア半島侵攻の際にスペインに持ち込まれ、その後の大航海時代にスペインから南米にまで伝わったという、壮大な歴史物語が背景にあったのです!


②材料のポイントは??

使う材料のうち、特にポイントとなるのが「コーンスターチ」です。コーンスターチは、トウモロコシ粉から作られる純度の高い澱粉。他の粉類とは違ってグルテンを生まない上、吸水性が低いため、軽い仕上がりになるのが特徴です。結果サクサク・ホロホロとした独特の食感に。

その食感を維持するためにも、焼き色が付く前にオーブンから出し、硬くなりすぎないように注意することが必要。ちなみにレシピによっては、薄力粉を一切使わずコーンスターチ100%で作るものもあります。


③デコレーションのポイントは??

基本のスタイルは丸型で、厚めに成形し、焼き色を付けません。また、サイドをココナッツファインで装飾することも、南米ではお馴染みです。

大きさは、一口サイズから直径10㎝くらいのものまでさまざま。チョコレートがけにするなど味に変化をつけたものも時折、現地のパティスリーなどで目にします。


お菓子も世界を旅して、郷に従う!?


スペインの「アルファフォーレス」は、南米のそれとは違って、ナッツとハチミツを使った長細い形のもので、あくまでクリスマスの時期に食べられるお菓子です。

南米ではヨーロッパと同じ材料で作ることが困難だったため、内容・作り方が少しずつ変わっていき、それが今日の、いつでもどこでも食べられる南米版「アルファフォーレス」になったのだとか。

ポルトガルの「パン・デ・ロー(Pão de Ló)」というお菓子が日本に伝わり、今では長崎銘菓「カステラ」として定着したように、お菓子も長い歴史の中を旅しながら、世界各地で変化を繰り返し、その土地ならではのカタチに定着していったのでしょう。アルファフォーレスとの出会いで、そのことを改めて実感することができました。

そんな壮大な歴史も感じることができるお菓子、アルファフォーレス。みなさんもぜひご家庭のキッチンで、アルファフォーレスづくりにトライしてみてくださいね!

次回は、南米・チリの郷土菓子「カルソネス・ロトス(Calzones Rotos)」のレシピ&トリビアをお届けします!

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