おしゃれFOODIEがいく〈カジュアルおせち〉

店頭におせち料理の材料が並び出し、テレビや雑誌など各メディアでお節料理の話題が増えはじめると、お正月を迎える準備に気忙しくなりますが、皆さん今年のおせち料理はどうされますか?

少し昔なら、おせちは家庭で作る料理でしたが、お店で買う方が一般的になりつつある今の世の中。購入先も昔はデパートくらいだったと記憶しているものの、今はスーパーマーケットやネット通販で販売されていて、コンビニでも購入できるようになりました。バブル期に流行った高級おせちの流れは、もちろん今でも続いていますが、昨今の流れとしては「お手軽おせち」の傾向が強いとも思えます。

 そもそも「おせち」とは、奈良時代から存在していたとされています。ですが、定かではありません。文献に残っている江戸時代のおせちも今のものとは違い、神様へのお供えの要素が強く、実際に食べるものではなかったそうです。それが明治期になるとお供えだけの形式が廃れ、祝いざかな(お正月料理)を重箱に詰めるようになりました。そして明治後半に「婦人の友」をはじめとする雑誌で重箱詰めのお料理がおせち料理として紹介され、ここから私たちがイメージする重箱に入ったおせちが登場したというわけです。

さらに大正時代になると、重箱のおせちがますます盛り上がり、試行錯誤を重ねて現代に続く「口取り・焼き物・甘煮・酢の物」に収束されたのです。その後も戦前の女学校で「かっぽう教育」が行われ、全国に広まったおせり料理。戦後の高度成長からバブル期と景気が良くなるにつれて、おせちの中身も伊勢海老やあわびが使われるようになり、見た目の華やかさが加わったそうです。こうしてみると“重箱に入ったお節料理”の歴史は、意外にも近代になるのです。

 では令和の世は、どのようなおせちが注目されているのでしょうか。現代は“多様化”が認められ、そこに紐付く商品がつくられる時代です。材料を揃え、時間をかけてつくったのに残念ながら余ってしまう、核家族化が進み、つくるのも食べるのもストレスになってしまう、そんなネガティブ意見が増えつつあるのが正直な実情です。その一方で、おせち料理という日本の美しい文化を子や孫に伝えていきたいという想いがあるのもまた事実。そこでフィットしたのが購入という選択肢です。冷凍技術が飛躍的に進歩したこともあり、洋風や中華風など、より美味しくバリエーションも増えたことで注目を集めているのです。

現代を象徴するおせちの一例として、あるコンビニでは1品100円で、栗きんとんなど好きなものを好きなだけ気軽に買い揃えることができるミニおせちは、単身者に人気なのだとか。盛り付けも重箱に拘らず、お好みのお皿に盛り付けるのも現代風で良しとされる傾向も高まり、むしろお皿にセンス良く盛り付けられたおせちはオシャレに見えます。

パーティー料理の延長になりつつあるようにも思われるおせち料理ですが、祝いざかな3品(黒豆・田作り・数の子)と、そのいわれを説明できれば、他のお料理はどんなものでも構わないと私は思います。おせち多様化の時代、おせちをカジュアルに楽しむのもひとつの新しい形ではないでしょうか。

カジュアルおせちにおすすめのレシピはこちら

参考 「MONO TRENDY」WEB

   「国立歴史民俗博物館」

タグ

    オススメコラム・特集

    このコラムに関連するコラム