「夏の土用」

タイトルの夏の土用と読んで「夏?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。それはあまりにも「土用=夏のうなぎの日」のイメージが強いからだと思います。土用とは、「立春」「立夏」「立秋」「立冬」の前、約18日間ずつの合計72日間を指します。つまり土用は季節の変わり目の養生期間なのです。季節の変わり目は急激な気温の変化に体調を崩しがち。旬のものを食べて、身体を労わる期間ともいわれています。

夏のうなぎの「土用の丑の日」は、奈良時代からうなぎを食べると夏痩せに良いとされ、昔からそうしてきたこと、そして江戸時代、売り上げに悩んだうなぎ店を助けるために平賀源内が行事食として売り出してヒットし、それが確立して、現代に至るといわれています。

さらにこの「丑の日」は災難を受けやすい日と考えられており、「丑」にちなんで「う」のつく食べ物で縁起を担いだり、丑の方角の守護神「玄武」が黒の神様であることにちなみ、「黒い食べ物」で厄除けをする習わしがあるそうです。そのため「土用」の「丑」の日は、うなぎ・うどん・瓜・梅干し・牛肉・どじょう・しじみ・茄子・黒豆・黒胡麻を食べるようになりました。土用しじみ・土用卵・土用餅という言葉があるのは、そんな云われからなのです。

実は、土用しじみの歴史はうなぎよりも以前。旬であるしじみは、うなぎよりも庶民的であったとされています。産卵を控えた夏のしじみは栄養豊富で整腸作用もある食材。胃腸が弱りやすいこの季節にうってつけの食材なのです。もちろんこの時期のしじみは、大きくておいしいのでおすすめです。

他にも土用の付く言葉はたくさんあり、どれも陰陽五行説や四季、地域の風習から生活に根付いていて興味深いものがあります。

〇土用卵…夏の土用に鶏が産み落とす卵

〇土用餅…夏の土用に食べるあんこ餅。関西・北陸地方に残る風習。宮中で暑気あたりを防ぐため、ガガイモの葉を煮だした汁でもち米の粉を練り、丸めた餅を味噌汁に入れたものを土用の入りに食べる風習があったのだとか。江戸時代には餅をあんこで包んだあんこ餅に姿を変えたそうです。

〇土用干し…衣類・書籍を虫やカビから守るため風通しをすること。梅干しを作る工程で、三日三晩天日干しにします。田んぼの水を抜いて、ひびが入るまで乾かすのも土用干しと呼ぶそうです。

〇土用掃き…すす払い

〇土用三郎…夏の土用入りから3日間。この日が晴れれば豊作、雨なら凶作

〇土用凪…風がなく海が静かで蒸し暑い状態

〇土用間…夏の土用に吹く、涼しい風

〇土用波…夏の土用の頃に海岸に打ち寄せる大波

〇土用隠れ…夏の土用の水温が高い期間、魚が深場に移動し、釣れなくなること

〇土用灸…夏の土用に据えるお灸。夏バテに効果あり

土用は夏だけではなく季節の変わり目です。日本古来の行事にならって、季節を意識した生活を楽しみましょう。

<レシピの詳細は画像をタップしてください↑↑↑>

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参照

「からだに効く和の薬膳便利帳」武鈴子 監修

「産泰神社」HP

オフィシャルメンバー:滝野 香織

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