春を告げる野菜「若ごぼう」ってどんな野菜? 大阪府八尾市農家の辻野さんに聞くおいしい食べ方

大阪府の東部に位置し、奈良県との県境にあたる生駒山系の麓にある八尾市。そこで作られる野菜「若ごぼう」は、大阪府でも主に八尾市でしか栽培されていないご当地野菜です。

八尾市で代々、若ごぼうを作り続け、15年前にサラリーマンを辞めてお父さまの跡を継いだ辻野さんに、若ごぼうの魅力を聞きました。

春を告げる野菜「若ごぼう」

八尾市の特産品「若ごぼう」は、根を食べるふつうのごぼうとはちがって、葉、軸、根のすべてを食べることができる野菜。「葉ごぼう」ともいわれています。栄養価が高く、食物繊維は、サツマイモの約1.4倍、鉄分はほうれん草の約1.6倍ふくまれているのだとか。

特に葉の部分には、高血圧や動脈硬化のリスク軽減が期待できるといわれるポリフェノールの一種「ルチン」が含まれていることが分かっています。体にいい野菜といえるでしょう。

いまやどんな野菜も年間を通じて食べられる時代ですが、若ごぼうは例外。収穫、流通の時期が2月から4月初旬と限られていることから、「春を告げる野菜」とも呼ばれています。

辻野さんの畑では露地、ハウス栽培で若ごぼうを作っています。若ごぼうの収穫は2月のハウス栽培のものから始まります。露地栽培の若ごぼうは、気温が高くなる3月下旬から急激に成長して、背丈が1m以上になるのを待って収穫。4月上旬には、青々と茂った若ごぼうの姿が八尾市のあちらこちらで見られ、地元の人々は春の訪れを実感します。

若ごぼうの栽培に適した八尾の土壌

そもそも、なぜ若ごぼうが八尾市の特産品になったのか――? 辻野さんに聞くと、砂が混ざった土壌が若ごぼうに適しているのではないかという答えが返ってきました。

辻野さんの畑がある土地は、奈良県から大阪湾へと流れる一級河川、大和(やまと)川に近いため、土壌に少量の砂が混じっているそうです。

辻野さんが作る若ごぼうは、大手スーパーや直売所などで販売されています。いい若ごぼうを作るには、相当な労力がかかるんだそう。

辻野さんの若ごぼう作りは、まず夏に土を消毒するところから始まります。真夏の暑い日に畑にビニールを張ることで、土の温度は80℃の高温になり、その作業が土壌の消毒になるといいます。

奥さまと一緒に毎日若ごぼう作りの作業をされている辻野さんは、「若ごぼうの収穫の時期は家の食事も毎日若ごぼうづくしですよ」と笑っていました。

また辻野さんは、若ごぼうの根の部分を柔らかくするための工夫もしています。9月のお彼岸頃に畑に若ごぼうの種をまき、生えてきた葉と軸を12月の寒い時期にいったん枯らし、根だけを残して刈りとります。春が近づくにつれて、自然とその根から青々とした葉が生えてきます。この何か月もかけた手間によって根の部分が柔らかくなり、おいしい若ごぼうが収穫できるのです。

「何か月も若ごぼうで畑を使いますからね、若ごぼうの収穫が終わったあとは、すぐ枝豆の種をまいています」と、辻野さん。

若ごぼうの収穫を終えてから土壌の消毒を行う夏までの間に作られる枝豆も大人気。春を告げる若ごぼうのように夏の訪れを感じる枝付きの枝豆は7月中に収穫、出荷され、すぐになくなってしまうほどです。

「今後は若ごぼうの加工品も作りたい」

手間暇をかけて作られる若ごぼうは、前述したように捨てるところがないコスパの良い野菜。シャキシャキとした食感で、煮物、揚げ物、炒め物、汁物などさまざまな料理に使えます。

今回は簡単にできる若ごぼうの炒め物のレシピを教えていただきました。

若ごぼうの葉と軸はくせがなく、ほんのりとした甘み。おひたしなど、若ごぼうだけでもおいしく食べられるのでおすすめです。

八尾市では、若ごぼうが収穫される時期にはセブンイレブンと地元農家の協賛のもと、若ごぼうのチャーハンやパスタ、スープなどの期間限定商品が販売されています。そのほか、地方への発送も行っているんだそう。

辻野さんの今後の目標を聞くと、「冬に刈りとる葉の部分を利用して、サプリメントなどの加工品を作りたい」という答えが返ってきました。栄養価が高い旬の野菜、若ごぼうが全国区になる日も近いことでしょう。

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