【世界の郷土菓子 レシピ&トリビア】 Vol.3 チリの郷土菓子「カルソネス・ロトス(Calzones Rotos)」

こんにちは! 旅するパティシエ・鈴木文です。

お菓子ブランド「世界のおやつ」を主宰し、商品開発や店舗プロデュース、メディア・イベントなどを通じて、旅とお菓子のストーリーをお届けしています。

そんな私のお仕事の礎になっているのが、世界一周の旅の経験。これまで世界50カ国以上を訪ね、500種類以上の郷土菓子を学んできました。

その旅は、ただ見たり食べたりするだけの旅でなければ、単なるレシピ調査でもありません。現地の人々と一緒に、現地のお菓子をつくりながら旅することで、その国や地域の歴史・文化・風土を紐解いていく旅。

その旅の様子とお菓子のストーリーは、連載「世界の郷土菓子をつくる旅」で13回にわたり綴ってきましたが、ここでは、それらの記事の中に登場した、お菓子のレシピ&トリビアをご紹介していきます!



第3回は、「その名も“破れた女性の下着”!?首都サンディアゴでつくる、チリの郷土菓子『カルソネス・ロトス』」の回で登場したお菓子をピックアップ。甘さは控えめで、外はサクサクとしたクリスピー生地。レモンの香りに食欲をそそられて、何個でも食べられてしまいそうなお菓子です。南米・チリの首都、サンティアゴで学んだレシピ&トリビアをお届けします!

チリの郷土菓子「カルソネス・ロトス」のレシピ




カルソネス・ロトスの材料 (約25個分)

・薄力粉 …450g
・ベーキングパウダー …小さじ1
・グラニュー糖 …170g
・レモンの皮 すりおろし …1個分
・全卵 …2個
・牛乳 …120g
・飾り用粉糖 …適量
・揚げ用油

カルソネス・ロトスのつくり方

※下準備
・鍋に注いだ油に余熱を入れておく



1. 薄力粉にグラニュー糖、全卵、レモンの皮、牛乳の順序で合わせていく。


2. ある程度弾力をもたせるまで、しっかりと合わせる。

3.薄力粉を振った台に生地を置き、麺棒で約1.5㎜の厚さに薄く伸ばす。


4. カッター(もしくはナイフ)で10㎝×3㎝ほどの長方形に切り分けて、中央に小さな切り込みを入れる。

5. 中央の切り込みに片側を通して、クルリ!




6. 約180℃の油に成形した生地を投入(途中ひっくり返しながら、約3~4分間揚げる)。



7. キツネ色になったら取り出す。


8. 粗熱がとれたら、お好みで粉糖を飾る。


9. 完成!!


チリの郷土菓子「カルソネス・ロトス」のトリビア

①お菓子の名前の由来は??



スペイン語の「Calzones Rotos」を直訳すると、「破れた女性の下着」という意味。思わずドキッしまうような名前ですが、決していやらしい意味ではなく(笑)、そこには一つのエピソードがありました。

その昔、サンティアゴの中心地にある「アルマス広場」で、手売りでお菓子を販売していた女の子のスカートが、吹雪の中で突風に煽られめくり上がり、彼女の破れた下着が見えてしまったのだとか。

そのときに女の子が売っていたお菓子に「破れた女性の下着」、つまり「Calzones Rotos」と名付けられたのだそうです。


②材料のポイントは??



カルソネス・ロトスの特徴の一つに、揚げて時間が経っても、美味しく味わえる点が挙げられます。その理由の一つは、多めに配合された牛乳とベーキングパウダー。水分を多く含む柔らかい生地がふんわりと膨らむため、冷めても固くなりにくいのです。

そして二つ目は、レモンの皮を入れること。油で揚げて時間が経っても油臭くなく、爽やかな柑橘の香りが残ります。


③デコレーションのポイントは??



長方形に切った生地の中央に切れ込みを入れて、片側を中に通すデザインのカルソネス・ロトス。生地の厚みや、辺の長さ、切れ込みを入れる場所は、ある程度お好みで、一つひとつカタチがまばらでもOK。

カリーナさん曰く、「細く長めで、流れるようなデザインが美しい!」とのこと。短い辺は斜めにカットするとバランスが良くなります。切り込みを広く開けすぎると破れてしまうのでご注意を。

チリの喜びも、悲しみも教えてくれる郷土菓子

前述のとおり、カルソネス・ロトスの名前の由来だけを聞くと、クスリと笑ってしまうようなお話。しかもそれ以上の意味は、現地でつくり方を教えてくれたカリーナさんもご存知ないようです。


しかしそのエピソードは、チリがまだスペインの植民地だった頃のお話。植民地時代のチリでは、海賊の襲撃や、先住民との断続的な戦争などが続き、社会は非常に不安定な状態にありました。


そんな時代背景も踏まえて、“女の子が手売りで”や“破れた”というキーワードから読み解くとすれば、当時の庶民の苦しい生活が反映されている……と考えることもできるのでないでしょうか?


このお菓子が、スペイン由来のものではなく、また、非常に安価に、簡単につくれるという点からも、私にはそんな風に思えてならないのでした。


いずれにせよ現代で、カルソネス・ロトスは、家族団欒には欠かすことのできない存在。喜びも悲しみも含めて、その地域の歴史や当時の世相に思いを巡らせる機会を与えてくれる、まさにチリの“郷土菓子”なのです。みなさんもぜひご家庭のキッチンで、カルソネス・ロトスづくりにトライしてみてくださいね!

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