「内瀬のみかんが一番うまい!」。知る人ぞ知るみかんの名産地で元気なみかんを育て続ける「アサヒ農園」

秋から冬にかけておなじみの果物と言えば「温州みかん」。全国各地に産地があり、有名なブランドみかんも数多くありますが、三重県でも県南部を中心にみかん栽培が盛んに行われています。

そんな中、知る人ぞ知るみかんの産地が三重県度会郡南伊勢町内瀬(ないぜ)地区。リアス式海岸の五ヶ所湾をのぞむのどかな土地で育つみかんは、少し小粒ながら皮が薄くて剥きやすく、甘くて果汁たっぷり。「内瀬のみかんじゃないと」と地元では指名買いする人も多くいる人気のみかんです。

リアス式海岸をのぞむ温暖な土地はみかん栽培に最適

現在、内瀬地区でみかん栽培に関わる農家をとり仕切り、内瀬柑橘出荷組合の組合長として「内瀬みかん」の普及に携わるのが「アサヒ農園」の田所一成さん。みかん農家の4代目として、家族みんなでおよそ2.5haのみかん畑を管理しています。

アサヒ農園では温州みかんを始め、デコポン、はるみ、カラ(カラマンダリン)、せとか、ブラッドオレンジなど8種類の柑橘類を栽培。露地栽培だけでなくハウス栽培も行っているので、年間を通じてさまざまな柑橘類を出荷しています。

温暖な気候で柑橘類の栽培に適した赤土の土壌が広がる内瀬地区。海と山に囲まれ平らな土地が少ないため、みかん畑の多くは日当たりの良い山の斜面に作られています。

「海から吹く風が、さらにみかんを甘くしてくれる」と、田所さんはこの土地で育つみかんのおいしさの秘密を教えてくれました。

大切なのは「元気で安心安全なみかんの木を育てる」こと

田所さんがみかんを栽培する中で大切にするのは、元気なみかんを育てること。「みかんの木が健康でなければ、美味しい実は成らない」をポリシーに、実際に見て、手で触って、みかんの状態を把握します。

「みかんの木は、大げさに言えば家族みたいなもん」と、病気や害虫から守るための化学農薬の使用は必要最小限にし、緑肥や有機質肥料を使った土作りに力を入れています。安心安全なみかん作りを求めた結果、第三者機関により人と自然に優しい栽培とチェックを受けた農作物のみが認定される「みえの安心食材」に、温州みかんとデコポンの2つが登録されました。

今回、みかん畑を何カ所か見せていただきました。

露地栽培のみかんの木には、明るいオレンジ色のみかんの実がたわわに実っています。出荷時期の早い「極早生」、その次に出荷される「早生」など、温州みかんにもさまざまな種類があることを教えていただけました。

続いて見せていただいたのはハウス栽培のみかん。

ハウスみかんは夏場に出荷されます。雨風の影響を受けず、水分量をコントロールできるため、ハウスみかんは実がひと回り大きく、皮も薄めでさらに甘いのが特徴です。主に贈答品として利用されます。

次に訪れたのは「せとか」のハウス。

せとかとは、温州みかんよりふた回りほど大きいみかんで、出荷時期は3月中旬頃から4月下旬にかけて。手で剥けるほど外皮がやわらかく、じょうのう膜(内側の皮)も薄くて食べやすいのが特徴です。濃厚な甘みとたっぷりとした果汁が味わえることから「みかんの大トロ」とも言われる高級品種です。

ずっしりとした実の重さで木が折れないよう1本1本の枝を麻縄でつるしたり、デリケートな実を守るためにひとつひとつの実に袋をかけたりと、とにかく手をかけて育てられていました。

そうしてできたせとかは、鮮やかで濃いオレンジ色に輝き、実を割ると果汁がはじけ飛ぶようなみずみずしさ。田所さんのせとかは銀座の有名フルーツショップにも出荷され、1個1,000円以上という値付けがされています。

また、南伊勢町や志摩市の産地直売所でも田所さんのみかんが販売されています。

ふるさとの土地が育てるみかんに自信

最近では伊勢志摩サミットが開催された「志摩観光ホテル」の料理長が田所さんの畑へ足繁く通っており、完熟みかんを使ったデザートはもちろん、本来なら摘果して廃棄していた未熟な青みかんを材料に使うなど、みかんの新たな魅力を見いだしてくれているそうです。

「みかん農家として、そういう人からも学ぶものは多い」と、料理人、洋菓子職人、カフェ店主など他業種の人と積極的に交流している田所さん。みかんのおすすめの食べ方を尋ねたところ、「生でそのまま食べてもらうのが一番。他にはゼリーやタルトに使ってもらったりしています。あと、地元の人はみかんを絞ってドレッシングにしたりするかな」とレシピ(https://www.mainichigrillbu.com/recipe/857)を教えていただきました。

生まれも育ちも内瀬地区という田所さんは、みかん畑を遊び場として、みかんと共に暮らしてきました。大学を卒業し、しばらくは都会で働いていましたが、人と人との関係が温かく、慣れ親しんだ地元に戻り、家業であるみかん農家を継ぐことにしました。以来20年以上みかんと向き合ってきましたが、「いまだに毎日発見することばかり」と話します。

「結局、みかんを育てるのは内瀬の気候風土であり、自分はみかんが元気に育つ手伝いをしているに過ぎない」と、生まれ育ったふるさとへの敬意を忘れません。

「内瀬のみかんが一番うまい!」

そう自信を持って送り出す内瀬みかんは、今日もそれを味わう人を笑顔にしていることでしょう。

アサヒ農園HP http://www.naizemikan.com/

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