2021.3.19UP
二十四節気に合わせて心と体を整える“春分”
二十四節気(にじゅうしせっき)を意識しながら自分の内側に耳を傾け、自然の流れに沿った食事を通じて健やかで彩り豊かな毎日をおくる。第93回は「春分(しゅんぶん)」です。
3月21日~4月4日頃、朝晩はまだまだ冷えることも多い春分ですが、日中の暖かさに春の訪れを感じる時期です。
今回のテーマは「精進料理」。春のお彼岸には精進料理を食べる習慣があるそうです。精進料理を単刀直入に言うと「肉や魚などの動物性たんぱく質を使わない料理」のことです。野菜のみの細々としたお料理という印象ですが、元々は「男らしさ・勇気・力」などを意味した言葉であり、仏教の世界では「一生懸命、修行する」という意味で使われたのです。
なぜ肉食がダメかというと、仏教の戒律のなかに「不殺生戒」と呼ばれる「生き物を殺さない」という厳しいルールがあったからとされています。その昔、僧侶たちは托鉢で自分たちの食事を摂っていたとされましたが、托鉢で得た供養の食べ物は原則「全て食べる」という決まりがありました。
もちろん肉も例外ではありません。食べてもOKという肉は「己が食べるために動物が殺されるのを見なかった肉」「己が食べるために動物が殺されたと聞かなかった肉」「己が食べるために動物が殺された疑いがない肉」という三種浄肉と呼ばれる限れられた肉のみだったそうです。現在でもこのような戒律を守り続けているお坊さんもいるそうですよ。
とある大乗経典には「あらゆる生き物は輪廻しています。過去、もしかすると自分の親や兄弟であった存在かもしれないし、未来にそうなる可能性もある」として肉食の禁止を説いています。
精進料理は一般的に低カロリー高たんぱくでダイエットに向いていると思われがちですが、油を多く使う調理法が多く含まれるのでカロリーは低くありません。野菜の天ぷら「精進揚げ」や油揚げ・がんもどきなど揚げ物は欠かせないので、ある程度のカロリーはあります。
また、料理の基本となる出汁は、鰹節というわけにはいかないので、昆布と干し椎茸がメインになります。出汁のうま味と野菜のうま味をじっくり引き出す料理法は、簡単に美味しくなる魔法のような添加物や合成調味料に慣らされた私たちの舌には物足りなく感じてしまうかもしれません。それでもお寺という凛とした空気の中でいただくことを想像すると、滋味深い味わいが身体中に染み渡り、心が浄化されていくことでしょう。一度精進料理を学びに行ってみたいものです。
参考:「就活ネット」WEB
仏教文化情報えーヴァム
レシピ
「精進お稲荷ごはん」
「豆腐の落とし揚げ」
「南瓜の茶巾絞り」
「五目煮豆」
オフィシャルメンバー:滝野香織